ドイツ:放射性廃棄物の包括的処分プログラム案を内閣が承認

2015年8月19日

処分プログラム案策定にあたり、透明性と確実性に配慮したと強調するB.ヘンドリクスBMUB大臣(=右)©BMUB

処分プログラム案策定にあたり、透明性と確実性に配慮したと強調するB.ヘンドリクスBMUB大臣(=右)©BMUB

 ドイツの連邦環境・建設・自然保護・原子力安全省(BMUB)は8月12日、国内で発生するすべての放射性廃棄物を安全かつ責任を持って処分するための包括的概念を示した「放射性廃棄物処分国家プログラム案」を内閣が承認したと発表した。低・中レベル廃棄物(L&ILW)の最終処分場としてすでに決定済みのコンラート旧鉄鉱石鉱山に加えて、高レベル廃棄物(HLW)の最終処分用に新たに1か所を選定する方針だが、今回BMUBは、地域住民らの懸念を特別に斟酌してコンラート処分場の拡張計画を実施しないと明記。これにより、今後2022年までに排出される放射性廃棄物はすべて、HLW用の施設に処分されると見られている。同プログラムは放射性廃棄物に関する欧州連合(EU)指令に基づき、BMUBが戦略的な環境評価と国民からの意見聴取を経て策定したもので、8月23日までにEUの執行機関である欧州委員会(EC)に提出するとしている。

 ドイツでは福島第一事故を受けて2022年までにすべての原子力発電所を段階的に閉鎖すると決定。このため、BMUBはこれらの廃止措置にともなう廃棄物や海外での委託再処理から出る廃棄物も含め、2080年までに発生する全種類の廃棄物の総量を試算した。それによると、
(1)発電所からの使用済み燃料は10,500トンで、CASTOR型キャニスターに封入した場合約1,100本分、
(2)欧州で使用済み燃料を再処理した後に発生するL&ILWとHLWはキャニスター300本分、
(3)研究開発や実証試験用の原子炉から出る使用済み燃料が500本分、である。

 このほか、60万立方メートルのL&ILWを処分する必要があり、これらは主に、原子力発電所の運転と廃止措置、および放射性物質の工業・医療・研究利用に伴う廃棄物である。BMUBはまた、かつてL&ILWの試験処分が行われていたアッセⅡ岩塩坑の廃棄物もすべて取り出して処分する考えで、それらは20万立方メートルほど。アッセⅡでは塩水が流入するなど地層が安定しないため、1978年に処分が停止していた。さらに、グロナウにあるユレンコ社のウラン濃縮工場からの廃棄物10万立方メートル分も処分が必要だとしている。

 使用済み燃料とHLWの処分については、2013年7月に最終処分場のサイト選定に関する新たな手続法案が議会で可決。それまではニーダーザクセン州のゴアレーベン岩塩坑を候補地として適合性調査が進められてきたが、連邦政府は同年4月にこれらの作業を白紙としたほか、国民の合意に基づいたサイト選定を行うため、連邦政府や州政府、各界の代表による委員会が安全要件やサイト選定基準に関する提案を作成することを決定。同委は遅くとも2031年までに合意ベースの候補地を議会に勧告することになっているが、ゴアレーベンも新たな選定プロセスにおける候補地の1つとして残留した。