世界原子力協会:2035年までの核燃料の需要と供給を分析・予測

2015年9月14日

 世界原子力協会(WNA)は9月8日、世界の原子力発電所で使用される核燃料の2035年までの需要量と供給量を原子力設備容量のシナリオ毎に分析・予測した報告書を公表した。中国など多くの国で需要量が急増するのに加え、2次供給量が制限されるため、この期間内に追加のウラン採掘が必要になるが、採掘業界が不況な近年でも、いくつかのウラン鉱山では開発が進展中であるとした。また、標準シナリオと高シナリオでは2025年以降、直ちに追加のウラン供給が必要になるほか、供給パイプライン計画の開発も必要になるとの結論を明らかにしている。

 同報告書はWNAが2年に1度、取りまとめているもので、今回で17版目。世界の原子力産業界にとって最も信頼できる情報ソースであるとして、WNAでは870ポンド(約16万円)で販売している。最新報告書の概要は以下のとおり。

 原子力発電は現在、世界の総発電電力量の約11%を供給しており、国際エネルギー機関(IEA)の予測では今後20年間は着実に拡大する。温室効果ガスを抑制するどのような戦略においても、原子力は常に重要な構成要素であり、同時にエネルギーの供給セキュリティにも貢献している。しかしながら、現在の市場、そして将来的な市場で、原子力が規制や政治的な障害にさらされ続けながら直面する課題--特に、規制緩和された市場における他電源との競争課題はますます増加していく見通し。原子力発電所を設置済みの国の多くで電力需要の伸びが低下している一方、多くの開発途上国では需要の伸びが甚だしく、原子力設備容量も拡大することが予想される。

原子力発電所所要量の予測
 福島第一事故後の後退にも拘わらず、多くの国がエネルギー戦略の中で環境保全と供給セキュリティの観点から原子力の拡大を支持しており、中国やインド、韓国だけでなく、欧州連合や中東の国々においても原子炉新設の見通しは引き続き良好だ。今回、前提となる原子力設備容量のシナリオとして、2015年半ば現在の3億7,900万kWが2035年までに5億5,200万kWに拡大するとした「標準シナリオ」のほか、7億2,000万kWに到達する「高シナリオ」、そして、容量の伸びが2030年までに止まり多くの原子炉が閉鎖されることを想定した「低シナリオ」を準備した。

ウラン供給量の予測
 一方、ウラン生産量に関しても、ウラン鉱山での既存および将来的な生産能力を評価して2035年までのシナリオ3種類を策定。標準シナリオと高シナリオの両方で、今後10年間に生産量が増加すると予想された。世界市場における2次供給ウランの役割は次第に縮小していくものの、2035年までの期間全般を通して重要な要素であり続ける。濃縮工場では廃品濃度を下げることにより原料UF6の供給量を節約するため、2025年までの期間は大量のウランが市場に追加で流入。このため、1次供給量と2次供給量すべてを合わせれば2025年まではウラン市場に適切な量が供給されると予想されるが、それは現在開発中のウラン鉱山と計画中、検討中の鉱山の多くが計画通りに操業開始に至ることが条件だ。2025年以降は、標準シナリオと高シナリオにおける需要を満たすために、さらなるウラン生産量が必要になるだろう。