英国:ヒンクリーポイントC建設計画への投資でEDFエナジー社と中国CGNが合意

2015年10月22日

閉鎖済みのA発電所と稼働中のB発電所が立地するヒンクリーポイント・サイト©EDFエナジー社

閉鎖済みのA発電所と稼働中のB発電所が立地するヒンクリーポイント・サイト©EDFエナジー社

 英国サマセット州でヒンクリーポイントC原子力発電所(HPC)建設計画を進めているEDFエナジー社は10月21日、英国と中国の両政府が2013年に交わした了解覚書に基づき、同計画に共同で投資を行う戦略的投資協定の締結で中国広核集団有限公司(CGN)と合意したと発表した。総工費180億ポンド(約3兆3,000億円)の同計画に対して、CGNは33.5%にあたる60億ポンド(約1兆1,000億円)の投資を約束したほか、EDFエナジー社がサフォーク州で検討中のサイズウェルC原子力発電所計画には20%を出資する。また、エセックス州のブラッドウェルB原子力発電所計画では、中国が独自ブランドの輸出用第3世代設計と位置付ける100万kW級PWRの「華龍一号」を採用し、来年にも英国における包括的設計審査(GDA)を申請する見通しになった。同計画で中国は主導的役割を担う予定で、対欧米では初となる同計画の輸出実績を足がかりに原子力輸出を拡大していく考えとみられている。

 英中が民生用原子力分野における長期的な連携協力の実施で合意したのは2013年10月のこと。翌2014年6月には、同分野での協力強化で両国政府は協定を結んでおり、この中でHPC計画に対する中国企業の3~4割の出資、および将来的に中国製原子炉を英国の新設計画に導入することを盛り込んでいた。このような経緯に基づき、今回の投資協定は中国の習近平国家主席が英国ロンドンでD.キャメロン首相と会談したのを機に調印されており、仏アレバ社製の160万kW級欧州加圧水型炉(EPR)を2基建設するHPC計画にEDFエナジー社とCGNはそれぞれ、66.5%と33.5%出資することで合意したもの。EDFエナジー社としては少なくとも50%の出資比率を維持した上で、その他の投資家の参加も募るのに対し、CGN側では英国で投資を行うための新会社「ジェネラル・ニュークリア・インターナショナル(GNI)」を設立するとしている。両社はまた、サイズウェルCとブラッドウェルB両計画の共同開発を視野に入れた幅広い連携に関する契約前文書に合意。HPC計画を今後さらに前進させるには、この契約前文書に基づく詳細文書を最終決定するほか、EDFエナジー社の資金調達計画の最終決定、EDFエナジー社とCGN両社の取締役会における承認--など、最終投資決定に向けた条件を整える必要がある。

 HPC計画については、2012年11月に原子力規制局(ONR)が英国の原子炉建設サイトに対する許可としては25年ぶりにサイト許可を発給したのに続き、同年12月にEPR設計のGDA審査で設計容認確認書の発給を許可した。2013年3月になると、英国政府が開発合意書(DCO)を発給したほか、HPCからの発電電力を買い取る際の固定(行使)価格を92.5ポンド/MWh(サイズウェルC計画が確定した場合は89.5ポンド)とした上で、35年にわたり差金決済する制度(CfD)について、同年10月にEDFグループと合意した。翌2014年10月には、欧州委員会(EC)がこのような英国政府による支援策を承認したほか、HPCを含む英国の新設炉からの放射性廃棄物を地層処分する際の価格設定方法についても、今月9日に承認する判断を下している。主要機器の供給契約については、EDFエナジー社が最終条件でサプライヤーと合意済みで、原子力系統設備と計測制御設備はアレバNP社、タービン系統設備はアルストム社、主要土木建築工事はブイグTP社とレイン・オルーク・グループが請け負った。初号機の運転開始は2025年頃になると見込んでいる。

CGNはEDFエナジー社の後続計画にも出資へ
 HPC計画への投資に加えてCGNが契約前文書に調印した2件のうち1つは、英国唯一の軽水炉が稼働するサイズウェル原子力発電所の増設計画。同サイトでは2基のEPR建設が計画されており、その建設段階で20%出資するという方向でCGNは原則的な契約前合意文書に調印した。もう1つは、かつて旧型ガス冷却炉が2基稼働していたブラッドウェル原子力発電所における新設計画になる。同サイトに「華龍一号」を2基建設するため、EDFエナジー社とCGNは英国仕様の「華龍一号」をGDA審査にかける方向で契約前文書に原則合意しており、審査にともなう活動を管理する合弁企業をEDFエナジー社とCGNが33.5%と66.5%の比率で設立するとした。中国ではCGNが広西省で計画している防城港原子力発電所Ⅱ期工事(3、4号機)に「華龍一号」の採用が決まっていることから、これらはブラッドウェルB発電所の参照プラントになる予定。両社はまた、ブラッドウェルB発電所を建設・運転するための最終投資決定に向けた、原則的な契約前合意文書に調印した。同発電所の建設段階にCGNは66.5%を出資する考えで、同プロジェクトはEDFエナジー社をパートナーとして中国が主導することになる見通しだ。