米エクセロン社:クリントン原子力発電所の早期閉鎖判断を1年先送り

2015年11月4日

 米国最大の原子力発電事業者であるエクセロン社は10月29日、イリノイ州で操業するクリントン原子力発電所(107.7万kW、BWR)の早期閉鎖に関する判断を1年先送りすると発表した。イリノイ州の発電設備をカバーするパワープールの「中西部独立系統運用機関(MISO)」が同月27日、同州南部地域における電力卸売市場で構造改革する必要性に言及したことから、電力自由市場で原子力発電所を運転する事業者に経済的な恩恵がもたらされる可能性に期待をかけた判断。同炉は採算性が低く何らかの対策が必要である点に変わりないが、その容量を来年3月にMISOの2016~2017年分の容量オークションに売り入札する方針も明らかにしている。

 米国では、発・送電部門の機能を分離するという連邦エネルギー規制委員会(FERC)の方針に基づき、国内の数州ずつカバーする独立の系統運用機関(ISO)、あるいは地域送電機関(RTO)と呼ばれる広域系統運用機関が存在する。これらのパワープールはプール全体の適性予備率を決定し、小売り業者に代わってプール全体で必要な発電容量を確保。具体的には、実運用年の3年前から制御エリア内の既存電源で容量オークションを4回開催して、容量を購入している。このような電力自由市場において、廉価なガス火力との厳しい価格競争を強いられる原子力発電所は運転の継続に十分な利益が得られず、イリノイ州ではクリントンをはじめ、エクセロン社の原子炉5基が経済的な危機に瀕している。

 エクセロン社の発表によると、MISOは「将来的な投資を呼び込み、顧客に信頼性のある電力供給を保証するためには容量市場プロセスの改革が必要かもしれない」と指摘。このような改革について関係者を交えた検討を計画しているとも述べたことが、今回、クリントン発電所に関する判断を先送りした主な理由だとした。また、環境保護庁(EPA)が、発電設備からのCO2排出量の大幅削減を義務付けたクリーンパワー計画の中で、この目標の達成で最もコスト効果の高い解決策を見つけるよう各州と発電部門に要求していることも理由になったと説明。1年の間、州の政策立案者は政策改革を検討し、すべての低炭素電源に公平な機会を与える法案を策定する時間的余裕ができる。そうした方策によって、イリノイ州はEPAのクリーンパワー計画の遵守において最良の立ち位置を確保出来るとの認識を示した。

 なおエクセロン社は9月にも、イリノイ州のバイロン原子力発電所(120万kW級PWR×2基)とクアド・シティーズ発電所(90万kW級BWR×2基)、およびペンシルベニア州のスリーマイルアイランド発電所(89万kW、PWR)の処遇について、決定を1年繰り延べると発表していた。同社はこれら発電所の容量を、北東部13州とワシントンDCをカバーする地域送電機関(RTO)「PJM」に登録しており、来年5月にPJMが行う2019~2020年分の容量オークションに3発電所を含む適当な原子力発電所の容量を売り入札する方針。電力卸売価格が過去10年で最低となったPJMでも、容量市場の構造改革が行われつつあることを考慮し、これら発電所の現在と将来の経済性について厳密に分析して下した判断だとした。その結果として、クアド・シティーズは少なくとも2018年5月まで運転を継続。バイロンは2019年5月までの運転継続が義務付けられるとしている。