エジプト:120万kW級原子炉4基の導入計画でロシアと政府間協定締結

2015年11月20日

エジプト字 ロシアの国営原子力総合企業ロスアトム社は11月19日、エジプト初の原子力発電設備となる120万kW級の第3世代原子炉を4基、同国北部のエル・ダバに建設・運転する協力で、両国が政府間協定(IGA)を締結したと発表した。調印はカイロで同国のA.F.シシ大統領立ち合いの下、エジプト電力・再生可能エネルギー省のM.シャーキル大臣とロスアトム社のS.キリエンコ総裁が両国の政府名義で行った。建設スケジュールや総工費には言及していないが、2022年にもエジプト待望の初号機が完成すると見られている。

 同時に両国は、IGAに加えてエジプトにおける原子力インフラを整備するための協力で了解覚書も締結。ロシアの連邦環境・技術・原子力監督庁(ROSTECHNADZOR)とエジプト原子力規制当局の間で調印された。これらの文書は、完成炉の燃料供給問題や運転・保守および修理に関わる義務事項を特定。IGAでは、使用済み燃料の処理や発電所従業員の訓練、およびエジプトの原子力産業と原子力インフラにおける規制・基準の改善支援についても調整するとしている。

 現地の報道によると、シシ大統領は国営テレビのインタビューで「国家予算で建設費を工面できないため、ロシアからの融資を受けて35年間で返済する」と答えた模様。具体的には完成原子炉からの売電収入で賄うと述べたことが伝えられている。

 エジプトは人口増加にともなう電力需要拡大への対処や生活水準向上のため、1980年代に地中海沿岸のエル・ダバに100万kW級原子炉を2基建設する計画を打ち出したが、チェルノブイリ事故を契機に同計画は中断。2000年代に入り、政府は国際入札の手配や採用設計の選択調査などの準備作業を進めたが、2011年のエジプト革命により、原子力導入計画は再び棚上げ状態になった。改めて国際入札を行うとの情報は昨年夏頃から浮上しており、原子力による国際展開を目指す中国の核工業集団公司(CNNC)が今年5月にエジプト原子力発電庁(NPPA)との協力で了解覚書を締結。ロシアも今年2月、V.プーチン大統領とエジプトのシシ大統領による公式会談の席で、同計画を共同で進めるための協議を実施していた。

 その際、両国はロスアトム社とエジプト電力・再生可能エネルギー省が詳細協議に入ることで合意したほか、両国の担当機関であるルスアトム・オーバーシーズ社とNPPAがプロジェクト開発合意(PDA)文書に調印。原子力発電所と付属の海水脱塩設備の機器構成、および主要な協力分野などを設定した。また、ロスアトム社のキリエンコ総裁は、原子力発電所建設とその資金調達それぞれについて、早急に政府間協定締結の準備を進める必要性を指摘していた。