英国:セラフィールドで建設するガラス固化施設の初期試運転が完了

2015年11月24日

NNLとキュリオン社の協同チーム©NNL

    NNLとキュリオン社の協同チーム©NNL

 英国の国立原子力研究所(NNL)は11月17日、セラフィールドの中央研究所で建設する放射性廃棄物ガラス固化施設の実証システムにおいて、非放射性の模擬廃棄物を使った初期試運転が完了したと発表した。これは米国キュリオン社と共同開発中の低・中レベル放射性廃棄物用・固化施設で、両者は今後、同システムを分解して中央研究所に移送。最終試運転を経て2016年にもフルスケールの商業運転を開始し、年間の最大処理能力を200トン以上とする計画だ。

 同施設では「ジオメルト技術」によるコンテナ内ガラス固化(ICV)システムを採用しており、技術自体は米エネルギー省(DOE)のパシフィック・ノースウェスト国立研究所が開発したもの。放射性同位体以外にも農薬やダイオキシン、重金属などによる汚染サイトで、1990年代から同技術を使った修復事業が米国、英国、日本、豪州などで商業的に行われており、NNLはこれらのために生産された26,000トンのガラスからも経験を反映させたとした。また、同技術では様々な形態の廃棄物を同時に処理することが可能なのに対し、英国には同技術による処理に適した低・中レベル廃棄物が30万トン以上存在する。このことからNNLは、汚染土壌や無機イオン交換中膜、廃止措置作業から出る汚染アスベストを処理することもできると指摘。処分方法が見つかっていない問題廃棄物も含め、英国の原子力複合施設から出る廃棄物について、管理・処理ライフサイクル・コストを大幅に削減可能なオプションを評価するというNNLの主要使命を果たす上でも、今回のコールド試運転成功は重要な節目になると明言した。

 キュリオン社も、NNL中央研究所に設置するジオメルト・システムは世界中の放射性廃棄物処理ソリューションを開発する技術革新ハブになると強調。日米や欧州の主要な政策決定者からも関心が寄せられており、同システムを世界の原子力市場に対する実証機会として活用する考えを明らかにした。