カナダ:ダーリントン原子力発電所で大規模改修、ピッカリング発電所の運転期間延長へ

2016年1月13日

 カナダ・オンタリオ州のエネルギー省は1月11日、オンタリオ州営電力会社(OPG)が操業するダーリントン原子力発電所(93.4万kWのカナダ型加圧重水炉4基)で、2026年まで10年間におよぶ大規模改修工事を行うと発表した。かねてより実施を約束していた計画で、OPG社は2009年から準備作業を実施。今年10月にも、最初の1基の作業に取りかかる。また、同発電所の改修期間中にクリーンかつ信頼性のあるベースロード電源を維持するため、州政府はピッカリング原子力発電所(50万kW級のカナダ型加圧重水炉×6基)の運転期間を2024年まで延長する計画も承認した。同州では2015年12月、同じくOPG社が所有するブルース原子力発電所の8基中6基についても、運転期間延長のために2020年から長期の改修工事を開始することが決定。既存の原子力発電設備を最大限に有効活用する方針を明らかにしている。

ダーリントン発電所の改修工事
 州政府とOPG社の発表によると、改修工事では原子炉毎に480体の燃料チャンネルと960本の出入口管を取り替えるほか、タービン発電機の大部分のシステムで分解・再組立を実施する。こうした作業に合計128億カナダドル(約1兆円)を投入予定で、これは当初見積を12億ドル(約1,000億円)下回る額。これにより州内にもたらされる経済的メリットは149億ドル(約1兆2,000億円)にのぼるとし、具体的には数千人分の雇用がダーリントン発電所で創出されるほか、州内の機器サプライヤー約60社にも雇用効果が生まれるとした。また、改修工事により、同発電所では運転期間の30年延長が可能になり、約3,000人分の雇用を温存。他の電源で代替するよりも低価格で、クリーンかつ信頼性のあるベースロード電力が生み出されると指摘した。作業が予算内で日程通り実行されるよう、OPG社には各ユニットの改修工事開始前に州政府からの承認取得が義務付けられた。

 オンタリオ州では「供給エネルギーのクリーン化」を戦略として推進しており、原子力と再生可能エネルギーを活用することで2014年に州内の石炭火力発電所の全廃に成功した。「価格が一定で予想可能なクリーン発電システムを持つことは、単に環境保全上の成果に留まらず、州の長期的な競争力維持のためにも重要だ」と明言。改修後の電力価格は7~8セント(5.8~6.6円)/kWhと予想するものの、最終価格は州の電力委員会(OEB)が決定するとしている。

ピッカリング発電所の運転期間延長
 ピッカリング発電所では1970年代前半に運転開始した1、4号機のほか、80年代半ばに運開した5~8号機が稼働中。OPG社は今後、州政府エネルギー省とOEB、および独立系統運用者との協議を進め、これら6基の運転を2022年まで続けた後、2基を閉鎖して残りの4基は2024年まで運転する。OPG社によると、同社の初期的な技術作業により同発電所は2024年まで安全運転することが可能であると判断。運転期間の延長は6億ドルの電気代節約と800万トンの温室効果ガス排出抑制につながり、地元地域では4,500人分の雇用が守られるとした。ただし、延長には原子力安全委員会の承認が必要であるため、OPG社は2018年の認可取得を目指して申請関連の作業を始めたところだと説明している。