米原子力学会:温暖化防止で原子力発電の恩恵に関する情報を各州に提供へ

2016年1月15日

 米国原子力学会(ANS)は1月8日、既存の原子力発電所の保持や新規の原子力発電所建設から得られる恩恵について、各州政府に情報提供するための特別委員会を設置した。各州内の発電設備から出る温室効果ガスの排出量を抑制させるため、環境保護庁(EPA)が2015年8月に各州政府に対し、それぞれのエネルギー計画を作成するよう指示する「クリーン電力計画」を発表したのに合わせた措置。同特別委を通じて、原子力発電の恩恵を各州に気付かせる情報をすべて提示するとともに、温暖化防止に役立つツールとして彼らが何を持っているか、原子力がどのように防止策の一部となり得るか理解させる一助としたい考えだ。

 特別委員会はP.ライオンズ米エネルギー省・元次官補とエクセル・サービス社のD.ホフマン社長兼CEOが主導。ANSメンバーをチームとしてまとめ、各州がそれぞれのクリーン電力計画に原子力を効果的に盛り込めるよう解説する潜在的なエネルギー・オプションのキットを作成中で、2016年2月にも公表予定となっている。

 ホフマン氏は「各州が原子力を活用するにあたり、様々なアプローチが存在する」と指摘。そのためのツールとなるキットは、各州の政策決定者にとって出発点となり、既存原子力発電所の将来的な扱いや原子炉の新設計画で判断を下す際にも活用できる。ANSはすでにいくつかの州で知事と接触済みで、今後、すべての州政府との接触を目指すとしている。

 ANSはまた、説明の中に全米における原子力の現状分析を加える予定で、既存原子力発電所の閉鎖と新設の制限がエネルギー市場に及ぼす影響全般や、米国の全体的な発電状況などを追加。各州の政策決定者が、原子力も含めたそれぞれのクリーン電力の効果について考慮する際、これらの分析結果が役立てられることを狙うとした。米国では現在、総発電量の19%が原子力で発電されており、低炭素電源による発電量の63%が原子力によるものとなっている。