フランス政府:使用済み燃料地層処分場の建設・操業で基準コストを改定

2016年1月19日

 フランスのエコロジー・持続可能開発・エネルギー省(以下、「エネルギー省」)のS.ロワイヤル大臣は1月15日、使用済み燃料を含む高レベル放射性廃棄物(HLW)等の深地層処分場(CIGEO)プロジェクトについて、建設・操業に要する基準の見積価格を(2011年12月末日の経済条件下で)250億ユーロ(約3兆2,000億円)に改定するとの省令に署名した。同プロジェクトの遂行には基準コストの定期的な改定が必要だとする原子力安全規制当局(ASN)の11日付け勧告に従ったもので、少なくとも事業期間中の節目毎に定期的に改定することも盛り込まれた。これまでの決算時に基準としてきた同コストが大幅に増額されたことから、フランス電力(EDF)など廃棄物の発生事業者は、2015年末の連結決算に反映させる考え。処分事業の実施主体である放射性廃棄物管理機関(ANDRA)の計画では、2020年代後半に処分場の操業試験を実施し、2030年代の操業許可取得を目標に、2018年前半にも事業許可を申請するとしている。

 フランス東部のムーズ県ビュールに位置する30平方km圏内での建設が決まっているCIGEOプロジェクトでは、HLWと長寿命の中レベル放射性廃棄物を地下500mの粘土層に回収可能状態で貯蔵する予定。処分場の設計調査をはじめ、土木工事と機器設置を含む建設作業費、処分場の操業時にかかる人件費、維持費、税金、保険料など、100年以上にわたる期間の建設・操業資金はEDF、アレバ社、および原子力・代替エネルギー庁(CEA)が負担する。これらの3事業者にANDRAとASNを含めたエネルギー省の作業部会は、2005年に135億~165億ユーロ(1兆7,000億円~2兆1,000億円)という見積評価結果を公表しており、3事業者は中間数値の141億ユーロ(1兆8,000億円)程度を基準コストと認識していた。しかし、その後ANDRAは2014年10月の政府宛て報告書に新たな評価結果として344億ユーロ(4兆4,000億円)を明示。一方、3事業者も2015年4月、事業期間中の技術革新や経済的な最適化等により見積総額は192億ユーロ~205億ユーロ(2兆4,600億円~2兆6,200億円)になると計算し、基準コストとしては約200億ユーロ(約2兆5,600億円)とする見解を表明していた。

 CIGEOプロジェクトの基準コストは、ASNの定めた安全基準を遵守しつつ、3事業者との緊密な連携の下、ANDRAが満たさねばならない目標値。今回の省令により、250億ユーロに改定された同コストは処分場の建設許可の発給時や試験操業、パイロット操業フェーズ終了時、安全審査などの節目も含めて定期的に見直されることになる。EDFでは、2014年12月末と2015年6月末の連結決算時に、同プロジェクトの基準コストを208億ユーロとして計算。今後はこれを250億ユーロで計算するため、2015年末の決算では廃棄物を長期管理する引当金が約8億ユーロ(約1,000億円)増加することになるほか、配当金への悪影響が見込まれるとした。アレバ社も約2億5,000万ユーロ(約320億円)分の補完条項を考慮するなど、基準コストの改定に伴う影響を2015年末の決算に統合するとしている。