米NY州:原子炉の早期閉鎖防止メカニズム創設を盛り込んだエネ政策の手続開始

2016年1月25日

 米ニューヨーク(NY)州政府は1月21日、同州で早急にクリーン・エネルギー経済への移行を進展させるため、A.クォモ州知事が提唱した50億ドルの「クリーン・エネルギー基金」制度を今年から10年計画で開始すると発表した。同知事は昨年12月、同州北部に立地する安全な原子力発電所への支援メカニズム設置や、2030年までに州内で再生可能エネルギーの発電シェア50%達成を目指した「クリーン・エネルギー基準(CES)」の創設案を公表しており、同基金制度で民間部門の第三者資金を呼び込めば、CESの推進に新たな弾みが付くとの認識を表明している。

 新たな基金の運営は州政府のエネルギー研究開発局(NYSERDA)が担当。今回、州の公営事業委員会(PSC)が承認した同基金により、州内で太陽光や風力、エネルギー効率化およびその他のクリーン・エネルギー技術産業を進展させ、州経済の活性化や温室効果ガスの排出量抑制を加速する。そのための技術革新プロジェクトや官民連携活動を通じて、今後10年間に、州民や事業者は390億ドル以上のエネルギー代を節約できるとした。また、クォモ知事は先週時点でCESの創設を正式に提案。再生可能エネルギーについては、強制力のある指令を6月までに策定するようPSCに指示した。原子力関係でもPSCは今回、北部の安全な原子力発電所が不必要に早期閉鎖するのを防止するメカニズムを盛り込んだCESの導入に向け、公的手続の実施を承認。原子力発電所はCO2を出さないので、NY州がCESに基づく将来に移行するための一助になるとの見解を示した。PSCはさらに、クォモ州知事のエネルギー・ビジョン戦略改革(REV)についても、最初の一歩を踏み出しており、地域レベルあるいは州全体の規模で、新しい先進的なエネルギー効率化プログラムの作成を大手電力・ガス会社に指示している。

 CESでは原子力も含めた低炭素電源が対象として規定されている。NY州北部には、J.A.フィッツパトリック、ナインマイルポイント、およびR.E.ギネイの3原子力発電所が立地しているが、これらが無かった場合、NY州では現時点で削減できている温室効果ガスが1,200万トン以上のCO2増加につながる可能性があるとした。ただし現地の報道によると、州政府はニューヨーク市の南東約40kmに立地するインディアンポイント原子力発電所(100万kW級PWR×2基)については、沿岸域管理法に基づいて運転の継続に反対している。同3号機が2012年6月以降13回、計画外停止したのを受け、2015年12月には同発電所の運転・安全手順に関する調査を公益事業部に指示。今回のCESで同発電所は対象外と見られている。