米国エネ省:TRU廃棄物処分場における2年前の放射線漏れ事象で地元州と和解契約

2016年1月29日

 米エネルギー省(DOE)は1月22日、ニューメキシコ(NM)州にある軍用・超ウラン元素(TRU)廃棄物深地層処分場(WIPP)で2年前に小規模火災と放射線漏れが発生した事象について、州政府環境局(NMED)と7,400万ドルの和解契約を結んだと発表した。州内の関連道路と水資源インフラ、および緊急時対応インフラについて、是正措置プロジェクトを実施するスケジュールと調達資金額などを定めたもの。これらの事象後、新たな廃棄物の搬入が停止していたWIPPでは、今年の12月にも操業が再開される見通しとなった。

 WIPPは核兵器の生産・研究で発生するTRU雑固体廃棄物を永久処分するため、米国が初めて建設した深地層処分場で、NM州カールスバッドの地下655mにある安定した岩塩層に貯蔵室を掘削し、1999年3月から廃棄物の受け入れを開始した。環境保護庁(EPA)の承認の下、DOEから管理業務を請け負ったニュークリア・ウェイスト・パートナーシップ(WNP)社がNM州政府の許可を10年毎に更新しながら操業してきたが、2014年2月に地下施設内で小規模の運搬車両火災が発生したほか、州内のロスアラモス国立研究所(LANL)から持ち込んだ廃棄物コンテナの破損により放射線漏れを検知。これにより、WIPPでは廃棄物の搬入を停止し、LANLの廃棄物は一時的に東隣のテキサス州アンドルーズにある低レベル廃棄物処分場(WCS)に移送していた。

DOEが運営する最新設備の緊急時オペレーション・センター(EOC)は2015年10月に完成し、緊急時演習などが行われている©WIPP

DOEが運営する最新設備の緊急時オペレーション・センター(EOC)は2015年10月に完成し、緊急時演習などが行われている©WIPP

 これらについてNMEDは2014年12月、WIPPとLANLが31件の違反行為を犯したとしてDOEとWNP社を提訴し、5,435万ドルの民事制裁金を要求した。その後の協議で、両者は2015年4月に和解に向けた一般原則で合意し、今回、これに基づいてカールスバッドとロスアラモスの両コミュニティ、およびNM州における関係インフラの改善プロジェクトで和解契約を結んだと説明している。同プロジェクトの詳細と資金内訳は以下の通り。すなわち、廃棄物輸送に使用していた北側のアクセス道路の改修に3,400万ドル、WIPP近郊のオフサイト緊急時オペレーション・センター(EOC)建設・配備に400万ドル、地元の緊急時対応者の訓練と能力向上に100万ドル、LANLからWIPPまでDOEが所有する輸送ルートの改善で1,200万ドル、LANLの飲料水システムにおける経年化した水道管の取替と計量機器の設置に1,000万ドル--などとなっている。