スイスの地層処分場計画:候補地の専門家が6地点中3地点で次の段階の調査を要請

2016年2月10日

 スイスの放射性廃棄物管理協同組合(NAGRA)は2月8日、地層処分場の立地候補となっている6エリアの地元州で、2つの専門家グループが3つのエリアについて調査を次の段階に進めるべきとの報告書を提示したことを明らかにした。さらなる調査を実施するためにNAGRAが選定したのは2つのエリアだが、3つ目のエリアが再浮上した場合に備えてNAGRAはすでに、第3段階の調査概念である3D耐震診断や地下深部で掘削を行う位置決めなど、調査計画について立案を始めている。

 スイスでは低中レベル、および高レベルの放射性廃棄物すべてを地層処分することになっており、NAGRAが3段階で構成されるサイト選定プログラムを実施中。2011年11月までの第1段階で、6つの候補エリア(ジュートランデン、ジュラ・ジュートフス、ベレンベルグ、ジュラ東部、チューリッヒ北東部、北部レゲレン)を選定した後、これらの中から地層処分設備と地上設備の設置区域として提案された20地点について絞り込む作業を第2段階として行っていた。地元州の専門家グループは、廃棄物を定置するホスト岩盤には堆積岩のオパリナス粘土層が好ましいとする点でNAGRAと合意。このためジュートランデン、ジュラ・ジュートフス、ベレンベルグの3エリアを予備サイトとしたほか、ジュラ東部とチューリッヒ北東部の2エリアを第3段階の調査に進めるとした。しかし、専門家グループは立地の潜在的可能性が残る北部レゲレンでも同様の調査を行う考えを支持したもの。

 この背景には、スイス連邦原子力安全検査局(ENSI)が2015年9月、処分場の深さである900mを700mに合理化した場合の工学的実行可能性について、追加の技術情報を提出するようNAGRAに要求したという事実がある。北部レゲレンの岩盤は非常に深い位置にあるため、この情報の審査結果次第ではENSIが北部レゲレンでも第3段階の調査を指示する可能性がある。NAGRAとしては、900mという深さにはデメリットがあるとの認識だが、追加情報文書の作成には半年かかるため、ENSIが完全な文書を審査して最終評価を下すのは2017年春になる見通し。この時点で北部レゲレンでも第3段階の調査を行うとなれば、すでに遅れ気味のサイト選定プログラムはさらに2年遅れることになる。このような不測の事態すべてに対処し、プログラムに遅れを生じさせないため、NAGRAは北部レゲレンでも調査計画の立案を始めたと説明している。