米国:2017会計年度予算要求でMOX工場の建設打ち切り、SMR開発は加速へ

2016年2月12日

 米国のB.オバマ政権は2月9日に2017会計年度(2016年10月~2017年9月)の予算教書を議会に提出し、その中で兵器級余剰プルトニウムを処分するためサウスカロライナ(SC)州で進めていたMOX燃料製造工場(MFFF)の建設を打ち切り、希釈後に地層処分する方針を明らかにした。商業炉で再利用するよりも大幅なコスト削減と時間短縮につながるとの評価結果を示しており、2017年後半までに同オプションの予備概念設計を完了し、概念設計を開始する考え。一方、原子力関係予算の方は対前年度比0.8%増となり、官民のコスト折半で進めている小型モジュール炉(SMR)開発・許認可支援プログラムの継続や使用済み燃料を集中的に中間貯蔵するパイロット施設の立地・許認可活動等への予算が増額されている。

MFFF建設プロジェクト
 DOE全体の予算要求額は325億ドルで、現行の2016年度予算レベルから29億ドル増額。MFFFの建設関連経費は国家核安全保障局(NNSA)の「核不拡散関係建設物」予算の中で計上されている。少なくとも34トンの兵器級プルトニウムを商業炉用の燃料に転換し、安全かつ効果的に処分するという目的のため、2007年からSC州サバンナリバー・サイトで建設工事が始まっており、ショー・アレバMOXサービス社が作業を請け負っていた。現在の工事進捗率は70%程度と言われているが、建設前の2004年当時に18億ドルと試算されていた総工費は年と共に増加。2014年3月に提出された2015会計年度予算教書では、建設工事を差し当たり凍結状態に置くための予算のみ要求されていた。

 2015年の統合延長予算法はMFFFの建設継続を指示する一方、コストと代替技術に関する調査の実施も指示しており、DOEはプルトニウム作業グループによる2014年4月の分析結果を独自に確証・評価するよう連邦政府出資の研究開発センターに求めたほか、2015年6月にはDOE長官が特別チームを編成して兵器級余剰プルトニウムの処分オプションに関する評価を実施。結果として、MOX燃料に転換する処分方法は予想より大幅に高額となり、年間8億~10億ドルの予算が数十年にわたり必要になることが確認された。このような背景から、2017年度の要求額は同プロジェクトを2017年度初頭から打ち切るための予算として2億7,000万ドルを計上。2016年度予算から7,000万ドルの削減となっており、今後はプルトニウムを希釈・地層処分(D&D)するための予備概念設計を実施し、2017年後半にも概念設計を開始することになった。

SMR開発と廃棄物処分場計画
 原子力エネルギー全体の予算要求額は9億9,400万ドルで、2016年度予算から773万ドル増加した。地球温暖化防止で利用可能な手段はすべて活用するというオバマ政権の方針を反映して、安全かつクリーンな原子力発電オプションはDOE原子力局の研究開発戦略における重要要素に位置付けられている。中でも優先順位が高いのは小型モジュール炉(SMR)の開発・商業化の加速で、2017年度の予算要求額は前年度から約2,700万ドル増の8,960万ドル。DOEは民間と50%ずつ出資するSMR許認可・技術支援(LTS)プログラムを継続中で2017年度はその最終年度にあたる。米国で開発した最先端のSMR技術で国の経済とエネルギー供給両方を保証していくとともに、地球温暖化の防止目標も達成する考えで、こうした努力を通じて、米国の製造能力や関連する原子力サプライ・チェーンも強化。米国からSMRを輸出する重要な機会も増大すると見込んでいる。2020年代初頭から半ばにかけて、最初の一群について設計認証(DC)取得を目指すが、2017年度初頭にはまず、ニュースケール社が独自のSMR設計のDCを申請予定となっている。

 使用済み燃料を処分する研究開発費は、「燃料サイクル研究開発」の項目の中で計上されており、2017年度予算としては前年度から1,184万ドル増の7,434万ドルを要求した。2016年度では使用済み燃料処分研究開発のサブ・プログラムとして(1)研究開発、(2)統合放射性廃棄物管理システム(IWMS)--に分けていたが、2017年度はIWMS活動の拡大が予想されることから、IWMS予算は別枠で単独に7,360万ドルを要求(5,380万ドル増)。商業用と軍用両方の廃棄物について、個別の管理施設を立地、設計、建設、操業するためのすべての下準備活動が行われる。具体的には(1)商業炉から出る使用済み燃料を集中的に中間貯蔵するパイロット施設と、軍事用高レベル廃棄物の永久処分場関係、(2)商用と軍事用両方の放射性廃棄物すべてについて貯蔵、あるいは処分する施設を合意ベースで立地するための支援活動--になるとした。今後10年間は、閉鎖済み原子炉からの使用済み燃料を受け入れるパイロット中間貯蔵施設に努力を傾注するほか、廃棄物を中間貯蔵施設まで輸送する能力の開発を実施。そして、大規模な中間貯蔵施設の立地と許認可に向けた活動に進めていくとしている。