米ウィスコンシン州:新たな州法により原子力発電所の新設が可能に

2016年4月7日

 米中西部のウィスコンシン州政府は4月1日、州内における原子力発電所の新設モラトリアムを撤回する法案にS.ウォーカー州知事が署名したと発表した。同法案は原子力発電所の承認手続と州のエネルギー優先政策の変更を可能にするという内容で、今年1月に州議会下院が超党派で可決したのに続き、上院も23対9で可決していた。米国ではオバマ大統領のクリーン・パワー政策に基づき、環境保護庁(EPA)が2015年8月、温室効果ガスの排出量削減を可能とするエネルギー計画の作成を各州に指示。同州では、安全かつ環境に優しく価格も適正なエネルギー源を確保する必要が生じていた。このため、廃棄物の安全性に対する懸念から約30年前に制定した原子炉新設モラトリアムを撤回し、新設の実行可能性調査が可能となるよう、労働組合やエネルギー関係者、州議会議員らが結束して今回の法案成立を後押ししたもの。

 ウォーカー州知事によると、原子力は化石燃料の代替エネルギーとして価格が適正である上、環境影響的にも安全かつ持続可能。今回の新たな州法により、ウィスコンシン州公益事業委員会(PSC)が州のエネルギー・ミックスを検討する際の柔軟性が増し、原子力設備を追加する可能性が生まれた。規制当局も、コスト効果や技術的な実行可能性という観点でエネルギー源を考慮しなくてはならず、検討順位としては省エネルギーとエネルギーの効率化、各種の再生可能エネルギーに続いて原子力を列挙。米原子力規制委員会(NRC)が2010年12月末以降に承認した先進的な原子炉設計、もしくは設計変更が承認済みの原子炉設計とするよう明記している。

 同州では現在、1970年代に運転開始したポイントビーチ原子力発電所の2基(各50万kW級PWR)が稼働中。ラクロス、ザイオン、およびキウォーニの各原子力発電所はすでに閉鎖されている。