ITER計画:冷凍機用の大型クエンチタンクが完成

2016年5月20日

©F4E

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 フランスの極低温機器製造会社であるChart Ferox社は5月17日、国際熱核融合実験炉(ITER)計画で使用する冷凍機用の大型クエンチタンク2台(=写真)が、チェコのジェチーンにある同社の工場で完成したと発表した。製造を請け負ったのはフランスのガス技術専門企業Air Liquide社で、下請け会社であるChart Ferox社も協力してタンク製造に当たったもの。直径4.5m×全長35mという世界でも最大規模の大きさであるため、特別仕様のトラック車両で南仏カダラッシュのITER建設サイトに輸送することになる。

 ITER計画には日本とEU、ロシア、米国、韓国、中国、インドの6か国・1機関が参加しており、2020年頃の完成を目指して作業が進展中。2013年から2014年にかけて、メインの実験棟と診断棟およびトリチウム棟で構成されるトカマク複合施設のベース部分でコンクリート打設が行われ、建屋の建設が進んでいるほか、参加国で分担する機器の製造と納入も始まっている。主要機器の1つである超伝導コイルでは、強力な磁場によって数億度Cのプラズマを閉じ込めるが、磁場を発生させるには導体が超伝導状態になるよう極低温(マイナス269度C)に冷やすことが必要。クエンチタンクは極低温システムの中でヘリウムガスが膨張し、冷却が不均一になるのを防止する役割を担う。今回完成したタンクの製造は2015年8月に開始され、ITER機構(IO)およびEUの担当組織である「フュージョン・フォー・エナジー(F4E)」が製造工程を監督したとしている。