米クアド・シティーズ原子力発電所:電力市場オークションで落札ならず

2016年5月27日

 米国最大の原子力発電事業者であるエクセロン社は5月25日、北東部13州とワシントンDC地区を管轄する電力プール「PJM」が2019年6月~2020年5月末までの発電設備容量を確保するために実施した初回の容量オークションで、同社が売り入札したイリノイ州のクアド・シティーズ原子力発電所(91.2万kWのBWR×2基)とペンシルベニア州のTMI原子力発電所1号機(89万kWのPWR)の容量が確保されなかったことを明らかにした。これにより、クアド・シティーズ発電所ではこの期間に収益を得ることができなくなり、5月31日に終了するイリノイ州議会でエネルギー市場の構造を是正する適切な法案が成立しなかった場合は、2018年6月1日付けで早期閉鎖される可能性が高まった。

 PJMの容量オークションでは、電力会社が提示する売り入札の札を集めて、入札価格の低い順から制御エリア内の必要量に達するまで容量を確保。必要な容量に達した時点の入札価格が市場決済価格となる。エクセロン社によると、同じイリノイ州にあるバイロン原子力発電所の容量の一部もPJMオークションで落札できなかったが、同発電所は2020年5月まで継続運転することがすでに決定済み。PJM管内で同社が保有するその他の原子力発電所は、ニュージャージー州のオイスタークリーク原子力発電所を除いてすべて、オークションで容量が確保されたとしている。ただしオイスタークリーク発電所の場合、新たな冷却塔の設置問題により2019年で早期閉鎖することが2010年に決定しており、オークションには参加していなかった。 

 同社は今月初旬、クアド・シティーズのみならず同じ州内のクリントン原子力発電所(107.7万kWのBWR)についても、原子力の恩恵が州内で一層認識される法案が成立しなければ2017年6月1日付けで早期閉鎖する可能性に言及。両発電所ともに稼働率は高いが、過去7年間の合計損失は8億ドル以上にのぼるとしていた。クリントン発電所の場合、エクセロン社は「中西部独立系統運用機関(MISO)」に容量を登録。1年先の期間について最近行われた容量オークションで落札できたものの、損失を補えるだけの十分な利益は期待できないとの見通しを明らかにした。

 これら2つの原子力発電所で早期閉鎖リスクを回避することが可能な包括的エネルギー法案は「次世代発電エネルギー計画(NGEP)」と呼称されており、イリノイ州のD.トロッター上院議員が5月5日に州議会に提案。太陽光発電などクリーン・エネルギー開発の促進やエネルギー効率の倍増を目標としており、運転コストと市場利益の差額を「炭素ゼロ・クレジット」の形で補填するなど、州内の原子力発電所に対しても将来的な運転継続を支援する内容だ。エクセロン社によると、同法案については州議会が超党派で支持を表明。州内コミュニティや労組のリーダーも賛同していると明言した。