米エクセロン社:クリントンとクアド・シティーズ両発電所の早期閉鎖 決定

2016年6月3日

 米国最大の原子力発電事業者であるエクセロン社は6月2日、イリノイ州にあるクリントン(BWR、107.7万kW)とクアド・シティーズ(91.2万kWのBWR×2基)の両原子力発電所をそれぞれ、2017年6月1日と2018年6月1日に早期閉鎖すると発表した。「炭素ゼロ・クレジット」の導入など、原子力発電所の恩恵に適切な見返りをもたらす法案がイリノイ州議会で成立する見通しが付かないというのが理由。両発電所ともに稼働率は高いが、過去7年間の合計損失は8億ドル以上にのぼることから、同社としては閉鎖に必要な措置をすでに開始している。

 廉価なガス火力との激しい価格競争を強いられる米国の電力自由市場においては、事業者が原子力発電所から十分な利益を得ることは難しく、エクセロン社は昨年秋頃から、両発電所を早期閉鎖する可能性を表明。両発電所が容量登録している中西部独立系統運用機関(MISO)と地域送電機関(RTO)のPJMで構造改革の実施を可能にする法案が成立することに望みを掛けていた。しかし、クアド・シティーズ発電所では2019年~2020年の容量オークションを落札することができず、過去数年にわたり働きかけを行ってきた州議会の動きも明確にならないため、同社としては苦渋の決断を下したもの。今後も引き続き、無炭素エネルギーの開発推進とクリーン・エネルギー分野の雇用創出と維持、および公平な電気料金構造の設定などを目指した「次世代エネルギー計画(NGEP)」法案を成立させるため、政策立案者やステークホルダーと協力していくとした一方、両発電所の閉鎖に向けた措置としては以下の作業を明示した。すなわち、
 ・米原子力規制委員会(NRC)に対し、30日以内に両発電所の永久閉鎖方針を通達する、
 ・両発電所の長期運転に必要とされていた資本投資プロジェクトを打ち切る、
 ・両発電所の資産価値を早急に償却するため、2016年は1.5億ドル~2億ドルを一括償却するなど、閉鎖日までに約20億ドルの償却を加速する、
 ・燃料購入と定期検査の計画をキャンセルする--である。

 同社によると、これらを実行に移すことで両発電所の1,500名以上の従業員や定期検査作業員1,000名以上に影響が及ぶほか、州内で4,200名分の雇用と年間12億ドル分の経済活動がダメージを受ける。また、州政府が実施した分析では、両発電所の閉鎖により州内のエネルギー卸売コストが4億3,900万ドル増加して年間6億4,500万ドルに達するとの結果がでたと指摘。原子力発電所を維持しておくことで、CO2の大量排出にともなう経済損失100億ドルを、10年以上にわたって回避できることが判明していたと強調した。