スウェーデン政府:エネルギー政策実現で原子力容量税を廃止へ

2016年6月13日

 スウェーデンの社会民主党政権は6月10日、責任のあるやり方で2040年までに再生可能エネルギー100%のエネルギー供給システムに移行するため、原子力発電の設備容量に課していた税制を2017年から2年間で段階的に廃止していく方針を明らかにした。社会民主党のほか、穏健党、緑の党、中央党、キリスト教民主党を加えた5党が、長期的なエネルギー政策に関する議会の枠組合意として公表したもので、既存の原子力発電サイトにおけるリプレース用10基までなら新規建設も許可すると明記。2040年という目標年が原子力の全廃日を意味するわけではないと強調するなど、低炭素化における原子力発電の重要性を認める形となった。同国のバッテンフォール社は昨年9月、長引く電力価格の低迷と高額な原子力税を理由にリングハルス原子力発電所1、2号機を早期閉鎖すると決定。OKG社も翌10月、オスカーシャム原子力発電所1、2号機の早期閉鎖方針を公表していた。

 スウェーデンではTMI事故後、約30年にわたり脱原子力政策を実施していたが、代替電源の見通しがつかないことから1997年に同政策を修正し、原子力発電所の運転期限条項を削除。2010年6月には同政策の撤回を決め、既存の原子炉10基に限り建て替えを可能にする法案を2011年初頭から施行した。しかし、2014年9月に発足した中道左派政権は、連立与党のエネルギー政策合意の中で原子力を再生エネとエネルギー効率化で代替するとしたほか、既存炉の建て替えで予備的調査を始めていたバッテンフォール社には作業の中止を指示。再び脱原子力政策に逆戻りする可能性が指摘されていた。

 今回の発表についてバッテンフォール社は、1984年に導入された1kWhあたり0.2オーレ(約0.03円)の原子力発電税が、2000年には2.7オーレ(約0.34円)に上昇し、同じ年に容量税に変更された後は7オーレ(0.89円)に達していた経緯を説明。同社のフォルスマルクとリングハルス両原子力発電所では包括的な近代化プログラムにより2040年代半ばまで運転継続が可能になったものの、スウェーデン放射線安全庁(SSM)が2014年に独立の炉心冷却機能の設置を提案しており、2020年以降の運転では一層厳しい安全要件を満たさねばならなくなった。電力価格が低迷している現状では依然として採算性が課題となっており、今後も引き続き発電コストの削減に努める必要があると指摘。投資判断についても当然のことながら商業的な根拠に基づいて下さねばならず、コストに関するすべてのファクターと長期的な市場展開も考慮する方針だと述べた。

 スウェーデン出身のA.リーシング世界原子力協会(WNA)事務局長も同日、同国の容量税廃止判断を歓迎すると発表した。適正価格で信頼性のある発電が可能な原子力発電は、低炭素な電源ミックスにおける重要要素でもあることから、その運転をリスクに晒したり、市場を歪めたりしないやり方で進めるべきだとコメント。徐々に増額された原子力税が近年、人件費の2倍、運転コストの中では3番目に高いというレベルに到達していた事実に触れた。また、これまでに何度も原子力政策を転換した同国だが、今や一貫性のある政策が敷かれ、長期の運転継続に必要な投資を自信を持って行えるようになったことは重要だと強調。他の国もスウェーデンの例に倣い、すべての電源がその利点に応じて公平に扱われるようなエネルギー政策を取るべきだと訴えている。