在日独商工会議所が「日独デコミ・シンポ」開催、日本の廃止措置市場で協力促進へ

2016年6月23日

german sympo 在日ドイツ商工会議所は6月21日、ドイツ企業が原子力発電所の廃止措置と解体でこれまでに培ってきた技術や経験、専門的知見を日本の関係市場に移転する情報交換や対話の機会として、「日独デコミッショニング・シンポジウム」を都内で開催した(=写真)。2011年3月の福島第一原子力発電所事故を受けて、ドイツでは同年8月に国内の原子炉8基を閉鎖したほか、2022年までに残り9基を全廃するという政府の脱原子力政策に従って、2015年はグラーフェンラインフェルト原子力発電所を閉鎖した。日本でも昨年中は5基が閉鎖されるなど、今後は原子炉の廃止措置が本格化していく見通しであり、マネージメント・ノウハウやロボット技術、作業員の訓練、除染技術、インフラ整備といった様々な分野の知見が必要となる。これらの蓄積を促進する国際間の技術協力が不可欠との認識から、ドイツ商工会議所のM.シュールマン特別代表は、同シンポジウムを通じて、日独両国の企業による長期的な共同プロジェクトの実施や密接なパートナーシップで基盤が構築されることへの期待を表明した。

 日独それぞれにおけるデコミッショニング市場の現状、将来の展望と課題などが紹介された後、ドイツの大手原子力発電事業者E.ON社のG.ロース・ジャパンプロジェクト開発部長が、日本の廃止措置・解体(D&D)市場で同社が提供できるサービスについて、詳細を以下のように説明した。

E.ON社の廃止措置経験と日本への提供サービス
 ドイツで1995年と2003年にそれぞれ閉鎖したビュルガッセン、およびシュターデの両原子炉では、廃止措置がかなり進展しており、現在は福島第一事故後の脱原子力政策で閉鎖したウンターベーザー、イザール1号機、およびグラーフェンラインフェルトの3基に関する廃止措置戦略を策定中。これらが完成してから2019年以降、実際の廃止措置作業に入る計画だ。このような経験を元に日本の電力会社に提供できるサービスとしては、廃止措置やロジのコンセプト、プロジェクトのプランニング、関連の廃棄物管理戦略、プラント毎の特性評価--などが挙げられる。廃止措置の実施で当社が有する能力を説明するため、廃止措置の全体像に関するPDCAを作成したが、それらは「プランニング」→「実行」→「チェック」→「課題の把握」→「ベンチマーク策定」→「後続プランニングへの反映」--といった流れである。

 廃止措置のシナリオとしては、(1)即時解体する、(2)最も重要な活動に関する意思決定が行われるまで中間期間を設ける、(3)中間期間を設けつつキャッシュフローがピークとならないよう措置を取る、(4)安全に密閉管理する--の4つに分類。どのように進めるのか最初にシナリオを決めた後、作業効率やコストに影響する様々な要素を懸案してコスト見積もりを出すほか、リスク分析モデルを用いてコストとリスク両方の側面をプロジェクトに加えていく。また、乱数を用いたシミュレーション計算手法であるモンテカルロ法により、標準モデルには入らない異なるシナリオについてもコスト分布を計算。こうした作業を通じてコスト面での最良ケースと最悪ケースを見極める。どの程度のリスクならカバー可能かなどを判定した上で中間的な数値を算出し、引き当て対応策も入れていくことになる。

 シナリオが確定したら、次に作業の詳細構造を分析し、誰がどのタイミングで何を実施するのか、その際依存しなければならない要素は何かなどを明確化する。最後のステップでは、統合マスター・スケジュール的なものを作って廃止措置の全体的なスケジュールを決めていくが、ここでは具体的なリソースの特定やキャッシュフローの想定といった詳細プランも作成する。当社はこのような作業サイクルをすでに3回、回した経験があり、日本市場に対して提供することが可能。こうした作業ノウハウそのものの提供についてもやぶさかではなく、シナリオ開発モデルやリスク開発モデル、コスト分析モデルなども是非、日本に移転したいと考えている。