北米3か国が共同声明:2025年までに総発電量の50%をクリーン・エネルギーに

2016年7月1日

©メキシコ大統領府

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 米国、カナダ、メキシコの北米3か国による首脳会議がカナダの首都オタワで開催され、2025年までに原子力を含めたクリーン電源で総発電量の50%を発電する、などの目標を盛り込んだ共同声明を6月29日に発表した(=写真)。3か国の連携刷新と強化を最優先事項とした同サミットで、米国のB・オバマ大統領とカナダのJ.トルドー首相、およびメキシコのE.ペニャニエト大統領は、3か国すべての国民にクリーンで豊かな未来を保証することが目標だと強調。そのために持続可能な経済成長を実現するとともに、低炭素経済への移行を促進し、3か国で同等の雇用機会が提供されるよう、採るべきアクションを調整していくとしている。

 「温暖化防止とクリーン・エネルギー、および環境に関する北米パートナーシップ」と題した声明文の中で、3か国はまず、昨年末にCOP21で合意されたパリ協定が地球にとってターニング・ポイントになったと指摘。北米3か国には、同協定に基づいて強力なリーダーシップを発揮し、その早期発効を促すための能力と資源、および道徳的責務があり、3か国の高度に統合された経済とエネルギー・システムは、クリーン・エネルギー経済への継続的な移行に役立つ非常に大きな機会を提供することになる。このような共通認識の下で3か国が誓約した「北米パートナーシップ」には、一層持続可能な将来への確実な道筋として様々な誓約が盛りこまれた。その中の1つとして、クリーンかつ確実な電力供給を保証するために、2025年までに3か国がクリーン電源による発電量を50%まで拡大するという重要目標も設定。その達成に際しては、それぞれのクリーン・エネルギー政策拡充を通じた再生可能エネルギーの拡大に加えて、クリーン・エネルギー技術の開発と技術革新、エネルギーの効率化などを実施すると明記した。技術革新の優先分野としては、スマート・グリッドやエネルギー貯蔵のほかに、CO2の回収・貯蔵(CCS)、原子力などを挙げている。

原子力が北米3か国の誓約達成で重要な役割
 こうした誓約について米原子力エネルギー協会(NEI)は同日、原子力産業界として歓迎するとの意向を表明した。北米全体では2015年に、低炭素エネルギー源による発電シェアが37%であったとの事実に言及した上で、NEIのM.ファーテル理事長は以下の見解を明らかにしている。

 たった9年後に発電量の50%をクリーン電源で賄うという意欲的な目標の達成には、CO2を排出しない原子力発電所が多数必要になる。米国では30州で稼働する原子力発電所が低炭素発電量の62%を供給しているし、カナダでは原子力は水力に次ぐ重要電源。メキシコでもクリーン・エネルギーの18%が原子力によるものだ。2020年までに米国で5基の原子炉が新たに運転開始する予定だが、連邦政府や州政府によるエネルギー政策や電力市場の欠陥が原因で早期閉鎖に追い込まれるものもあり、どのような形でも原子力の役割が減じられれば、2025年までにクリーン電源で50%という目標を達成するのは不可能。また、この目標の達成に加えて、電力供給システムの信頼性と供給価格の長期的な適正さを保証するには、原子力発電所による信頼性の高いベースロード発電基盤と化石燃料発電所、およびCCSが必要になる。
 原子力産業界は、3か国の首脳がCO2排出量の実質的な削減ですべての低炭素電源が必要と認識している点を高く評価する。これにはクリーン・エネルギー技術のリストが必要であり、その中に原子力が組み込まれれば、目標の達成に不可欠な送電グリッドの長期的信頼性や適正な電気料金、および温室効果ガスの削減といった方向性への支援が継続的に行われる。原子力産業界としては、北米大陸と世界を一層クリーンにするという重要な誓約達成の一助となることを楽しみにしている。