英国:セラフィールドでジオメルト技術による廃棄物固化システムが運用開始

2016年7月27日

 英国の国立原子力研究所(NNL)と米国のキュリオン社は7月24日、英国セラフィールドにあるNNLの中央研究所で、ジオメルト技術(注1)による放射性廃棄物ガラス固化システムの商業運用を開始すると発表した。過去2年にわたったコンテナ内ガラス固化(ICV)システムに関する共同プロジェクトで、両者は最終的な節目となるコールド/アクティブ試験を6月に成功裏に完了。その結果としてプロジェクト・チームは発表日の前の週に初めて、商業ベースのガラス溶融を実施し、腐食したマグノックス燃料の模擬スラッジと汚染土壌を混合処理する能力を実証した。英国では30万トンの中低レベル放射性廃棄物が存在するほか、原子力廃止措置機構(NDA)が古い原子力サイトでクリーンアップ作業を実施中。両者はこのような作業で発生する放射性廃棄物およびその他の有害廃棄物を同システムで処理・減容し、輸送や取り扱いが容易な安定したガラス固化体に変えられると強調。廃棄物の発生から管理・処分に至るまで、その取り扱い全般におけるコスト削減にも役立つとしている。

 ジオメルト技術は元々、米エネルギー省(DOE)のパシフィック・ノースウエスト国立研究所(PNNL)が開発したもの。米国、英国、日本、豪州では1990年代から、放射性同位体や農薬、ダイオキシン、重金属に汚染されたサイトの修復事業で同技術が使われている。2012年に同技術のライセンス権を取得したキュリオン社は、これらの事業で生産されたガラス固化体26,000トンの経験を活かし、コンテナ内で放射性物質や重金属を固定化するICVシステムを設計した。2015年11月に英国ワーキントンにあるNNLのエンジニアリング施設でモックアップ試験を含む初期の試運転プログラムを完了した後、システムを分解してセラフィールドに移送。再び組み立てて、通電前のシステム・チェックや安全性評価などを含む広範な最終試運転プログラムを実施していた。

 同社によると、英国の中低レベル廃棄物はジオメルト技術による熱処理に適しており、処分方法が見つかっていない廃棄物も含め、汚染土壌や無機イオン交換中膜、廃止措置作業から出る汚染アスベストといった様々な形態の廃棄物を同時に処理することができる。今後は、同技術が全世界の原子力市場で適用されるよう、NNLに設置したICVで同技術の有効性を実証していく考えで、年間の最大処理能力は200トン以上を目指すとしている。

 【注1】バッチ式ガラス固化技術で、容器内の処理対象物に電極棒を挿入し、ガラス形成剤を溶融。高温による分解で有害廃棄物を完全に無害化した上でガラス・マトリックス中に固化する方式。