米エクセロン社、フィッツパトリック原子力発電所の購入と運転継続 決定

2016年8月10日

 米国最大の原子力発電事業者であるエクセロン社は8月9日、ニューヨーク州北部に立地するJ.A.フィッツパトリック原子力発電所(87.9万kW、BWR)の所有権と運転認可を1億1,000万ドルで購入することで、現在の所有者であるエンタジー社と合意したと発表した。両社が共同声明で明らかにしたもので、これによりエクセロン社は、同発電所の早期閉鎖が予定されていた2017年1月に燃料交換を実施し、運転継続していく方針を明らかにした。これは今月1日、地元NY州の公益事業委員会(PSC)が、州北部の3つの原子力発電所に対する補助金プログラムを盛りこんだ包括的な温暖化防止策「クリーン・エネルギー基準(CES)」を承認したのを受けた措置。エクセロン社はPSCがCESを承認した場合、同社が州北部で保有するR.E.ギネイ(60.2万kW、PWR)とナインマイルポイント(62.8万kWと132.9万kWのBWR各1基)の両原子力発電所についても合計2億ドルの再投資を実行すると明言していた。今回の発表で同社は、北部の3原子力発電所の統合と運転、および燃料交換で2017年春に4億~5億ドルを支出するとしており、CESはNY州における高給雇用の維持やエネルギー・インフラに対する短期投資の促進など、州全体に良い影響を及ぼすと強調している。

 CESはNY州のA.クオモ知事がPSCに提案したクリーン・エネルギー源の利用拡大命令で、2030年までに州内の消費電力の50%までを太陽光や風力といった再生可能エネルギーで賄うことを要求。州北部にある3原子力発電所の維持は、これを達成するための重要な橋渡し手段という位置付けになる。CESの要件に基づいて、州内の電力小売り事業者やエネルギー供給業者には2017年4月から、原子力発電所の低炭素な価値に対する支払としてNY州エネルギー研究開発局(NYSERDA)から「ゼロ排出クレジット(ZEC)」を購入することが義務付けられる一方、原子力発電事業者は2029年までの12年間、PSCが「炭素の社会的費用(SCC)」等に基づいて2年毎に設定したMWhあたりの補助金を受け取ることになる。

 なお、フィッツパトリック発電所の売買交渉に関連して、NY電力庁(NYPA)は同発電所の廃止措置信用基金と関連債務をエクセロン社に移転することに同意した。この取引に対する規制機関の承認が得られ、売買取引が完了した段階でNYPAはこれらをまず、エンタジー社に移転。その後、同社からエクセロン社に引き渡すという段取りだが、取引を完了するには、司法省や原子力規制委員会(NRC)、連邦エネルギー規制委員会(FERC)など、州政府や連邦政府の複数機関による審査・承認が必要である。このためエクセロン社としては、2017年第2四半期になるとの見通しを示している。