ロシア:試運転中の80万kW級高速炉が定格出力で運転開始

2016年8月18日

ベロヤルスク4号機の中央制御室©ロスエネルゴアトム社

ベロヤルスク4号機の中央制御室©ロスエネルゴアトム社

 ロシアで民生用原子力発電所を運転・管理しているロスエネルゴアトム社は8月17日、昨年末に送電を開始したベロヤルスク原子力発電所4号機(80万kWの高速実証炉「BN-800」)で、フル出力による包括的な試運転が始まったと発表した。営業運転の開始準備としては最大かつ最後のプロセスであり、同炉が定格出力のまま設計パラメーターから逸脱することなく、安定的に連続運転可能であることを15日間にわたって確認することになる。同試験の完了後、同社は連邦環境・技術・原子力監督庁(ROSTECHNADZOR)から許可を得た上で、今年秋にも4号機の営業運転を開始する計画である。

 4号機を建設する目的は、高速炉で産業規模の発電が可能であることを実証すること。建設工事は1980年代に始まっていたが、政治体制がソ連からロシアに変わる中で作業は一時中断した。2006年に本格的に再開され、2014年2月に燃料を装荷した後、同年6月に初めて臨界条件を達成した。翌2015年8月には、クラスノヤルスク地方にある鉱業化学コンビナート(MCC)が、同炉の仕様に合わせた最初のウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料集合体を製造。ロスエネルゴアトム社は同年12月に同炉の電気出力を最小レベルの23.5万kWまで上げたところで、ウラル地方の送電網に初めて接続していた。同炉による今年初頭から現在までの発電量は13億kWh以上となっており、年内の総発電量は35億kWhに達すると同社は予測している。

 ロシアは、原子力発電所から出る使用済燃料は基本的に全量再処理することを目標に掲げており、ウラン資源の有効活用という観点からMOX燃料の燃焼が可能な高速中性子炉の開発を進めている。電気出力1.2万kWの高速実験炉「BOR-60」がウリヤノフスクで1969年から稼働しているのに加え、ベロヤルスク原子力発電所でも出力60万kWの原型炉「BN-600」が1981年から3号機として稼働中。また、4号機に次ぐ5号機として、出力120万kW級の大型商業用高速炉「BN-1200」の建設も2025年頃の着工が予定されているほか、「BN-1200」設計を採用した原子炉をサウスウラル原子力発電所1、2号機として、新規サイトに建設することが検討中である。