米国の2社が小型HTGRの開発・商業化で協力

2016年8月24日

 米メリーランド州を本拠地とするX-エナジー社は8月22日、同社が開発しているペブルベッド型高温ガス炉(HTGR)「Xe-100」を商業化するステップとして、サザン社傘下のサザン・ニュークリア・オペレーティング社と協力する了解覚書(MOU)を締結したと発表した。2009年に創立されたX-エナジー社は、地球温暖化防止に資する先進的な原子力エンジニアリングの専門企業で、「Xe-100」シリーズの原子炉であれば、CO2を出さずに信頼性の高い電力を様々な市場に対して24時間供給できると強調。サザン・ニュークリア社との協力により新たな原子力ソリューションを利用可能とし、クリーン・エネルギー化に向けた世界全体の動きを支援していきたいとしている。

 同社によると「Xe-100」設計は電気出力5万kWの小型設計で、シンプルかつ価格も適正。工場生産した機器を使って短期間で建設が可能であるほか、冷却材喪失時でも運転員の介入なしで安全性が確保されるとした。同設計の技術は、米エネルギー省(DOE)が次世代原子炉/新型ガス炉プログラムで資金投入していた3重被覆層の燃料粒子(TRISO)技術をベースとしており、DOEは今年1月、「Xe-100」を官民折半による新型原子炉概念の開発支援対象設計に選定。2035年頃の実証を目標に、原子炉設計と燃料の開発および初期の許認可活動に対して5年計画で総計4,000万ドルが交付されることになった。開発チームにはすでに、バブコック&ウィルコックス(B&W)社が分社化した原子力事業専門のBWXテクノロジーズ社のほか、航空宇宙・エネルギー・防衛産業大手のテレダイン・ブラウン・エンジニアリング社、炭素製品製造が専門のSGLグループ、オレゴン州立大学、DOEのアイダホ国立研究所とオークリッジ国立研究所が参加している。

 一方のサザン・ニュークリア社は、米国内の3サイトで6基の原子炉を運転しているほか、親会社が現在、米国で30年ぶりの新設計画となるボーグル原子力発電所3、4号機増設計画をジョージア州で進めている。サザン社のもう1つの子会社は、ビル・ゲイツ氏が後援するテラパワー社などとの協力により先進的原子炉概念を開発中で、同社の溶融塩高速炉(MCFR)は「Xe-100」と同様、DOEから将来的な建設と運転を目指した最大4,000万ドルの投資支援対象設計として選定された。今回X-エナジー社と結んだ覚書も、両社がそれぞれDOEの支援対象となったことに基づいており、同社のマンパワーや時間を提供することで、先進的な原子炉設計初号機が市場にもたらされるとの認識を明示。同社が有する商業炉の運転経験をX-エナジー社の研究経験と組み合わせて、共にこの目標を推進していくと述べた。