IEAが世界のエネルギー投資で初報告書、「クリーン・エネルギーへのシフト強まる」

2016年9月20日

 国際エネルギー機関(IEA)は9月14日、エネルギー供給システムに対する世界中の投資額について詳細に分析した報告書「世界エネルギー投資(WEI)2016」を初めて刊行した。燃料毎、発電技術毎、あるいは国別に近年の投資動向を包括的に解説する内容で、今後は年次報告書として取りまとめていく方針。今回2015年の実績を調査した結果、エネルギー・システムに対する世界の総投資額は1兆8,000億ドルで前年の2兆ドルから8%減少した。原因としてIEAは、再生可能エネルギーや送電網、エネルギーの効率化に継続的な投資があった一方で、原油やガスなどの探査活動経費の落ち込みがこれを上回ったと指摘。世界では低炭素エネルギー源の利用や効率化への再配列が発電部門を中心に進んでいるが、世界経済を気候の安定化に向けた軌道に乗せるには、主要なクリーン・エネルギー技術に一層の投資が行われる必要があると強調している。

 IEAのF.ビロル事務局長によると、クリーン・エネルギーへの広範なシフトは多くの場合、政府が講じた様々な政策が功を奏した結果、もたらされたもの。しかし、そうした政策がある程度達成されると、投資家達は将来的にも確実性や透明さを政策立案者に求めるようになるので、各国政府はエネルギー供給保証と温暖化防止への取り組みを維持するだけでなく、さらに強化していかねばならないと指摘した。

 国別の評価では、前年から引き続いて中国が世界最大のエネルギー投資国という結果がでた。2015年に同国がエネルギー供給に投じた総経費は3,150億ドルで、これは低炭素発電と送電網の拡充およびエネルギー効率化政策における堅実な努力の表れだとした。一方、米国では総投資額が2,800億ドルとなった。主に原油の価格低下により前年実績から750億ドル近く減少したが、これは世界全体のエネルギー総支出額における低下分の約半分に相当するとしている。中東地域とロシアはそれぞれ、探査コストの低下と為替動向のお陰で支出削減から回復しており、結果として世界全体で原油探査段階の投資総額のうち過去最高の44%が国営石油企業によるものだったとしている。

 原子力関係の追加設備投資についてIEAはあまりページを割いていないが、石炭火力削減の目的で原子力発電所の新設を精力的に進めている中国が大きく貢献し、2015年実績は過去20年で最高レベルの210億ドルに到達した。しかし、電力卸売価格の低下や炭素価格が弱含みになるという兆候、プロジェクト管理などの問題により、欧州および北米では引き続き原子力への投資が妨げられている状態。時には、既存発電所で運転期間を延長する投資さえ不経済になっているとした。また、いくつかの国では経年化した原子力設備をリプレースする投資があまり行われず、原子力設備の低下分を再生可能エネルギーでかろうじて埋め合わせていると指摘した。