英政府、ヒンクリーポイントC建設計画でEDF、中国企業との最終合意文書に調印

2016年9月30日

©EDFエナジー社

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 英国のビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は9月29日、フランス電力(EDF)が子会社を通じて南西部サマセット州で進めているヒンクリーポイントC(HPC)原子力発電所建設計画について、英国政府とEDFおよび33.5%の出資を約束している中国広核集団有限公司(CGN)がロンドンで、同プロジェクトを実行するための最終的な契約・合意文書に調印したと発表した。これにより、同計画は数年間にわたった厳格な準備・計画段階を終え、本格的な建設段階に正式に移行。サプライヤーとの早期請負者関与協定に基づく作業やエンジニアリングの準備作業がすでに始まっていることから、EDFは計画している2基の欧州加圧水型炉(EPR)のうち、初号機が2025年に送電を開始する予定であること、総工費もこれまで通り180億ポンド(約2兆3,600億円)である点を改めて強調した。

 この日に調印されたのは、HPC発電所への適用が決定した固定価格(行使価格)による発電電力の差金決済取引(CfD)について、事業者であるEDFエナジー社の出資企業が政府所有のCfD取引担当企業と交わした契約書、および担当大臣と関連する全投資企業との協定書である。また、関連する労働組合との包括的合意文書に加えて、完成発電所の稼働期間中に廃止措置と放射性廃棄物管理の全経費を電気料金で確保する内容の契約が英国で初めて締結された。署名式には当事者であるBEISのG.クラーク大臣とEDFグループのJ.-B.レビィ会長、CGNの賀禹・董事長のほか、EDFエナジー社のV.デリバスCEO、フランスのJ.-M.エロー外相、中国国家能源局のヌル・ベクリ局長などが出席した(=写真)。

 BEISは、国内で数十年ぶりという新設計画を推進する歴史的な協定が結ばれたことで、英国の原子力発電は新時代に向けた重要なステップを刻んだと評価。総工費の60%以上が英国企業に発注され、26,000人分もの雇用が創出されるとしたほか、発電所が完成すれば60年にわたって国内電力需要の7%を満たすことになるとの見通しを述べた。クラーク大臣も、9月15日にT.メイ政権が包括的審査を経て同プロジェクトを承認した際、HPC発電所の支配権を売却する場合は英国政府が阻止する権限を持つことをプロジェクトの実施条件として課した点を強調。発電所の安全セキュリティは保証されるとの認識を示した。また、英国はエネルギー供給設備のアップグレードを必要としており、将来も低炭素エネルギー供給を保証していく上で、HPCのような原子力発電所が重要な一部分であることは疑う余地がないとの見解を改めて表明した。

 EDFエナジー社は、CGNとEDFグループが長年培ってきた協力関係が新たな節目を迎えたとし、広東省台山で共有しているEPR建設工事の経験は、HPCプロジェクトに直接的な恩恵をもたらすと指摘。その他のEPR建設プロジェクトで得られる経験もすべて、HPC発電所の設計やプランニングに活かされるとした。また、HPCプロジェクトの始動により、後続のサイズウェルC原子力発電所建設計画とブラッドウェルB原子力発電所建設計画の実施が可能になるとの認識を示した。デリバスCEOも、HPCプロジェクトは英国における原子力の復活に弾みを付けるとコメント。同プロジェクトが様々な課題や障害を克服したことは、同社の後続プロジェクトで役に立つとしている。