中国とカナダ、新型燃料CANDU炉の開発・建設に関する協力で原則合意

2016年9月30日

©CNNC

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 カナダ型加圧重水炉(CANDU)の開発・建設を子会社を通じて行っているカナダのSNCラバリン社は9月22日、第3世代の70万kW級CANDU炉となる「新型燃料CANDU炉(AFCR)」の開発・販売・建設を目的とした合弁事業体の設立で、中国核工業集団公司(CNNC)および上海電気と原則的な合意に達したと発表した。軽水炉4基分の使用済燃料を再利用して稼働するというAFCRの初号機を中国で2基建設するとともに、将来的には後続炉を中国のみならず世界市場でも建設していくことが主な狙い。2017年半ばにも新会社の商業登記を済ませるほか、AFCR技術を完成させるために中国とカナダにそれぞれ、設計センターを設置するとしている。

 中国では現在、33基の商業炉が稼働中だが、このうち秦山第Ⅲ原子力発電所の2基(各72万kWのCANDU炉)はCNNCが2000年代初頭、カナダの国営原子力開発事業体であるカナダ原子力公社(AECL)から導入した。クローズド燃料サイクル技術の開発を国家戦略とする中国は、国内PWRの使用済燃料に含まれるウランを秦山のCANDU炉で利用できるようにするため、2008年11月に第Ⅲ秦山原子力発電公司と中核北方核燃料元件公司(CNNFC)および中国核動力研究設計院(NPIC)が、AECLと共同プロジェクトを実施する協力協定を締結。2010年3月には、PWRから回収したウランを初めて秦山第Ⅲ発電所1号機に装荷していた。

 SNCラバリン社は2011年にAECLから商用原子炉部門を買収し、現在は100%子会社のCANDUエナジー社が原子炉事業を展開中。これまでに開発した「CANDU6」と「改良型CANDU6(EC6)」の両設計に基づき、CNNCと連携しながらAFCR技術の開発を継続している。同設計は燃料としてリサイクルしたウラン燃料やトリウムの利用が可能であり、減速材と冷却材に重水を使った圧力管型。カナダと国際社会における最新基準を遵守できるという。今回の合弁事業体の設立は、2014年にCANDUエナジー社とCNNCが結んだ枠組合意に基づいており、当時のCANDUエナジー社の発表によると、中国核能行業協会(CNEA)が招集した中国の専門家小委員会が、開発中のAFCR設計を審査し、これを好意的に評価。同設計で使用済燃料の再利用が可能になれば、中国の軽水炉技術が補完され、使用済燃料の保管量とウランの輸入量を削減することができるとした。また、秦山第Ⅲ発電所のCANDU炉2基も、将来的にリサイクルしたウラン燃料が装荷できるよう改造するとしている。

 3社による合意文書への調印はカナダのオタワで行われ、同国のJ.トルドー首相と中国の李克強首相が立ち会った(=写真)。今後は関連するすべての政府機関と規制当局から承認を得ることになる。SNCラバリン社は、中国で完成するAFCRにより、天然ウラン燃料を新たに調達せずに同国の400万世帯に十分な電力を供給できるほか、年間600万トンのCO2排出が抑制されると強調。COP21で合意されたパリ協定の世界的な目標達成にも貢献するとの見解を示している。