ブルガリア:コズロドイ5号機の運転期間延長に向けた改修工事 完了

2016年10月27日

 ブルガリアのコズロドイ原子力発電会社は10月26日、送電開始して以来約30年が経過した5号機(100万kWのロシア型PWR)の運転期間延長に向け、改修工事が完了したと発表した。改修済みのシステムや構造物、機器を点検・分析した結果、同炉は2047年まで合計60年間、安全に運転できる良好な状態にあるものの、差し当たり10年間の運転期間延長を規制当局に申請する方針だ。また、ブルガリアが2012年に打ち切ったベレネ原子力発電所(100万kW級PWR×2基)建設計画について、ロシア企業が製造済みだった機器の代金支払に関する交渉が両国間で最終決着したことが明らかになった。

 5号機の改修作業は、ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社傘下のルスアトム・サービス社が率いる企業連合が請け負っていたもので、ロシアの民生用原子力発電会社であるロスエネルゴアトム社とフランス電力(EDF)も同連合に参加。この日は、ブルガリアのエネルギー大臣や原子力規制庁長官、およびロスアトム社の第一副総裁の立ち会いの下、改修作業文書の引き渡しを明記した議定書に、コズロドイ原子力発電会社とルスアトム・サービス社の代表が調印した。ブルガリアで稼働中の商業炉は現在、同発電所5、6号機の2基のみだが、これらは国内の総電力需要の33%を賄う重要設備。このため、コズロドイ発電所では今年1月に、6号機(100万kWのロシア型PWR)についても運転期間を合計60年に延長するための改修作業を、ルスアトム・サービス社および国内企業であるリスク・エンジニアリング社の企業連合に発注していた。

 5号機の改修工事はブルガリアのエネルギー部門における最優先事項の1つであったことから、エネルギー省のV.ペトコワ大臣は、「コズロドイ発電所の設備容量を維持することで国内のエネルギー供給システムが持続可能になる」と指摘した。コズロドイ原子力発電会社のI.アンドレエフ常任理事は、欧州連合の厳しい要件を遵守する方式で改修プロジェクトを実行したと強調。契約企業についても、同様のプロジェクトによる経験が豊富であるなど、その作業品質の高さは国際原子力機関(IAEA)が確証済みであり、5号機の運転継続に支障が無いことは確実に保証できるとコメントした。

頓挫したベレネ計画関連でロシアに6億ユーロ返済へ
 ブルガリアはその一方、ベレネ発電所計画の中止にともなう機器製造代の支払いを巡ってロシアと係争しており、国際仲裁裁判所は今年6月、ロスアトム社傘下のアトムストロイエクスポルト(ASE)社が製造した長納期品の代金を支払うようブルガリア電力公社(NEK)に命じていた。その後、裁判所による金額の修正とさらなる協議を経て、NEKとASE社が最終的な解決合意文書に調印したことをロスアトム社は10月26日付けで発表。この合意に基づきブルガリアが返済する資金の調達は、9月末に同国議会で承認されたとしている。

 それによると、NEKは最終的に元利合計で6億162万ユーロ(約686億円)を12月25日までにASE社に支払うことになり、これを完済するまでは日歩として13万ユーロ(約1,482万円)も支払わねばならない。また、NEKが12月15日までに完済義務を負えた場合、ASE社は仲裁裁判所の判定日から12月15日までの利子2,380万ユーロ(約27億円)の支払をNEKに対して免除する。NEKの支払が12月16日から同月25日の間に完了した場合は、裁判所判定日以降に発生した利子の55%を免除することで両者は合意した。合意文書への調印後、NEKは合意内容を快諾した意思表示として500万ユーロ(約5億7,000万円)の支払いを自発的に済ませている。