チェルノブイリ発電所:4号機の石棺を覆う新シェルターの設置 完了

2016年11月30日

©EBRD

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 30年前に事故を起こしたウクライナのチェルノブイリ原子力発電所で、4号機の老朽化した石棺を覆う新たなシェルターの設置がスケジュールどおりに完了した(=写真)。総工費15億ユーロ(約1,793億円)の財源「チェルノブイリ・シェルター基金」を管理する欧州復興開発銀行(EBRD)が11月29日に発表したもの。4号機内に残存する放射性物質を100年間安全に閉じ込めることが可能な巨大なアーチ型構造物(NSC)を石棺近隣地区で完成させた後、石棺上部までレールでスライドさせる作業を今月14日から開始しており、今回、327m離れた定位置への移設を無事に終えることができたとしている。今後はプロジェクトの最終段階として、NSC内部の石棺解体機器や廃棄物管理設備の制御機能を持つ技術棟をNSCと接続。周辺環境から切り離されるようNSCを封じ込めた後、これらの機器すべてについて集中的な試験を実施し、2017年11月までに同発電所を環境への影響上、安全かつ安定した状態に移行させることになる。

 同発電所では1986年の事故発生直後に石棺を建設して4号機を封じ込めたが、急場凌ぎの構造物であったこともあり、後年は崩壊と放射能漏れの危険が生じていた。このためウクライナ政府と先進7か国は1997年、石棺の安定化と新たな覆いの建設を目標とする総予算21億ユーロ(約2,510億円)の「シェルター実施計画(SIP)」を策定。NSCの建設は同計画における300以上の関係プロジェクトの中でも中心的位置付けで、世界の45か国がシェルター基金を通じて総工費を拠出した。NSCは横幅と奥行きの長さが257m×162m、高さ108mという世界でも最大級の可動式鋼材製構造物で、総重量は36,000トン。フランスの建設大手であるバンシ社とブイグ社の合弁事業体「ノバルカ社」が2010年から工事を開始していた。

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