米イリノイ州:原子力への財政支援措置を含むエネ法案が知事の署名で成立

2016年12月12日

 米イリノイ州で複数の原子力発電所を所有・運転するエクセロン社は12月6日、州内の原子力発電所に対する財政支援措置を盛り込んだ包括的エネルギー法案に、B.ラウナー州知事が署名したことを明らかにした。これにより、同法は2017年6月1日付けで発効。同社は、収益の大幅な悪化により2017年6月と2018年6月にそれぞれ閉鎖予定だったクリントンとクアド・シティーズの両原子力発電所で、今後少なくとも10年間の運転継続を計画していると明言した。同社のC.クレインCEOも「この歴史的な法案によって、両発電所における数千の雇用と競争力の高い電気料金を維持しつつ州内最大のクリーン・エネルギー源を守ることができる」と指摘。地元コミュニティに対しても、数百万ドル規模の低所得者支援と職業訓練がもたらされると強調した。

 自由化された電力市場において、原子力発電所は低価格なガス火力との激しい価格競争を強いられ、稼働率の良好な両発電所でも過去7年間に合計8億ドル以上の損失を計上。エクセロン社は今年6月、炭素ゼロ・クレジットのように、CO2を出さない原子力の恩恵に適切な見返りをもたらすシステムを付加する法案が州議会で年内に成立しない場合は、両発電所を早期閉鎖する方針を表明していた。今回イリノイ州で成立した「将来的なエネルギー雇用に関する法案」の最大の特長は、CO2を排出しない発電設備に対する財政支援プログラムとして「CO2のゼロ排出基準(ZES)」が設定されたこと。これにより、原子力発電所には発電量に応じた支払がクレジット取引を通じて行われると見られている。また、法案審議の段階で数多くの修正が加えられ、顧客の支払う平均的な電気料金の上昇分は1月あたり25セント未満に抑えられたとしている。

クアド・シティーズ原子力発電所の地元高校で祝賀会に参加したイリノイ州知事(=中央)©州知事室

 州知事の署名に際し、両発電所従業員の母校である2つの高校では数千人規模の州民祝賀集会が開催され、エクセロン社と両発電所の従業員、および地元のビジネス・リーダーや環境保護グループ、州議員などが同法案の成立を祝った(=写真)。ラウナー州知事も、「この州法により、納税者や電気料金の納付者のみならず、クリントンとクアド・シティーズ両原子力発電所関係の雇用が守られる」と強調。数千人分の高給職やエネルギーの多様化が失われることはないと保証した。また、同法案の成立に向けて粘り強い交渉をつづけた人々への謝意を表すとともに、両発電所の関係者に対しても、運転継続に向けた熱意と辛抱強さ、大変な努力に感謝するとコメントしている。