米トランプ次期大統領:エネ省長官にR.ペリー前テキサス州知事 指名へ

2016年12月15日

©トランプ-ペンス政権移行チーム

 米国のD.トランプ次期大統領は12月13日、来年発足する自らの政権人事のうち、原子力発電を管轄するエネルギー省(DOE)長官として、リック・ペリー前テキサス州知事(66)(=写真)を指名する方針をウェブサイト上で明らかにした。

 ペリー氏は2012年と2016年の大統領選で共和党の予備選挙に立候補したものの、どちらの回も短期間で撤退。今年の選挙運動期間中はトランプ氏を激しく批判していたが、撤退後は同氏支持に回った。ペリー氏は約14年間の州知事時代、風力発電を拡大して州内の再生可能エネルギー関係雇用を大幅に拡大した一方、同州の豊富なエネルギー資源を背景に大手石油ガス生産企業であるエナジー・トランスファー・パートナーズ社の取締役会に名を連ねており、トランプ氏と同様、「地球温暖化は科学的に立証されていない」という持論の持ち主。この点から、2015年のCOP21で採択されたパリ協定に対する今後の取り組みについて、懸念の声が上がっている。また、DOEの現職長官であるE.モニッツ氏や前長官だったS.チュー氏が物理学博士であるのに対し、ペリー氏の学位は地元テキサス州のA&M(農工)大学で取得した動物科学の学士号のみ。1984年に政界入りする前は農業や空軍業務に従事していたことや、2011年のテレビ討論会で廃止すべき省庁の一つにDOEを挙げていたことなどから、同省長官としての資質に疑問を抱く向きもあると伝えられている。

 こうした懸念に関連して、トランプ次期大統領はウェブサイト上にペリー氏の指名を歓迎する各界からの弁を掲載。ニューヨーク・タイムズ紙が13日付けで掲載した同様の記事もリンクしており、同氏の指名は妥当との考えを示唆した。
 ニューヨーク・タイムズ紙は、G.W.ブッシュ政権下でDOE長官を務めた共和党のS.エイブラハム氏、およびクリントン政権下で同長官を務めた民主党のB.リチャードソン氏のコメントを掲載。両氏ともに、ペリー氏がいずれDOE長官として適応していくとの認識を示している。エイブラハム氏によると、自らもDOE長官に就任する前はたびたび、DOE廃止論を唱えていたが、DOEに入って実際にどのようなものであるか知り、考えが変わっていったという。同氏によると、DOE予算の6割は国家核安全保障局(NNSA)関連であるものの、その時々に発生する出来事によってDOEが果たす役割は多種多様。自らの長官時代はカリフォルニア州の輪番停電問題や、9.11後のテロ対策と核不拡散プログラムに追われた一方、チュー前長官はメキシコ湾での原油流出事故への対応、モニッツ長官はイランとの核開発協議に集中することになった。このように、DOEを統括していくきっかけは一つではなく、テキサス州という大きな官僚組織の運営経験を持つペリー氏も、長官としてしっかり役目を果たしていくだろうと述べた。