カナダOPG社:低・中レベル放射性廃棄物深地層処分場計画で追加調査の結果 提出

2017年1月6日

 カナダの商業用加圧重水炉19基のうち18基を所有するオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社は1月3日、これらから排出される低・中レベル放射性廃棄物(L&ILW)の深地層処分場(DGR)建設計画について、実施要請されていた追加調査の結果情報を環境省に提出した。同社が建設サイトとして提案するブルース原子力発電所隣接区域とは別に、2つの代替候補区域で調査を行った結果、環境への影響や発生コストが一層多大であることが判明。ブルース・サイトこそ適切な建設地点であるとの見解を表明している。環境省は今後、環境影響評価局に命じてこの調査結果を審査するとともに公開協議にかける方針。環境相が最終的に、ブルース・サイトでのDGR建設を勧告した合同評価パネル(JRP)の環境影響評価結果を承認した場合、同計画は次のステップであるサイト準備や建設認可の申請審査に進むことになる。

L&ILWは現在、地上施設であるWWMFに貯蔵されている

 カナダでは核燃料廃棄物管理機関(NWMO)が使用済燃料について深地層最終処分場建設候補地の予備評価を進める一方、L&ILWについてはOPG社がオンタリオ州ブルースA、B両発電所の中間区域で、地下680mの石灰岩層に永久貯蔵する計画を進めている(=)。数年にわたった科学研究の結果、同サイトの不浸透性石灰岩層は過去4億5,000万年の間動きがなく、世界で最も堅い岩盤の1つであるなど、処分場には最適であると同社は認識。連邦政府のJRPも2015年5月、同サイトにおけるGDRは安全かつ周辺環境へのリスクも軽減し得るとの評価を下しており、建設計画を直ちに進めるよう勧告した。しかし環境省は2016年2月、OPG社に対して(1)DGR建設が技術的、経済的に可能と思われるオンタリオ州南西部の堆積岩層および中央部から北部にかけての花崗岩層でも環境影響評価を実施する、(2)NWMOの使用済燃料用処分場がDGR隣接区域に建設されることを想定して環境影響の分析結果をアップデートする、(3)2012年の環境評価法に準じて、環境への悪影響緩和対策リストを改定する--を要請していた。

 これらの結果としてOPG社は、「現行のブルース・サイト案、あるいは2つの代替区域案においても周辺住民と作業員の健康と安全、環境防護という主要目的は果たし得る」との結論を提示した。ただし、代替区域案の方はブルース・サイト案よりも環境影響とコストが大きくなると指摘。具体的な環境影響は、DGR建設予定地の隣に暫定貯蔵されているL&ILWを代替区域に移送することで発生する温室効果ガスおよび放射線漏れ発生リスクの増大、サイトの準備作業や施設およびアクセス道路の建設で生じる植生への悪影響、草木の喪失による野生生物への悪影響などであるとした。また、追加発生するコストは12億~35億カナダドル(約1,050億~3,060億円)にのぼると同社は強調。代替区域へのサイト変更にともない、処分場の設計とサイト選定プロセスの実施、土地の収用、支援施設の開発と操業、廃棄物の再パッケージングと輸送、許認可手続きのやり直し--といった活動に費用がかかると説明した。このほか、受け入れ意欲のある自治体と先住民コミュニティから同意や支援を得る時間が必要になるなど、不確定要素も大幅に増大すると指摘している。