仏規制当局:日本鋳鍛鋼社製のSG機器備えた9基で再稼働 承認

2017年1月17日

 フランスの原子力安全規制当局(ASN)は1月13日、蒸気発生器(SG)底部の半球型部品(下鏡)に日本鋳鍛鋼株式会社(JCFC)の鍛造品が使われている原子炉12基のうち、9基の再稼働を承認すると発表した。同国内で稼働する全58基の商業用原子炉(すべてPWR)の中で、同社製下鏡を装備する90万kWの原子炉10基と145万kWの原子炉2基では機械的強度を弱める炭素偏析の存在が疑われていたが、事業者のフランス電力(EDF)が提示した90万kW原子炉の追加点検と技術実証の結果を精査した上で、再稼働に問題なしとの判断を下したもの。

 ASNは2016年6月、既存炉のうち18基のSG下鏡で鋼材組成に異常箇所が存在する可能性があると発表した。これらにはアレバ社傘下のクルーゾー・フォルジュ社とJCFCが製造した鍛造品が使用されており、EDFが運転継続には支障ないとの初期分析報告をしたのに対し、ASNは機器の安全性を確認するため非破壊検査など詳細な試験の実施をEDFに命じた。ASNは放射線防護原子力安全研究所(IRSN)の支援を受けてEDFの提供情報を分析しており、同年10月、JCFC製機器を備えた12基で特に高い炭素偏析が存在する可能性があるため、このうち7基ですでに追加点検を実施していることを明らかにした。残りの5基については、定期検査を前倒しして3か月以内に追加点検を行うようEDFに指示。同年12月になると、12基のうち「10基は再稼働し得る」との予備的判断を公表していた。

 90万kWの原子炉10基のうち、残ったトリカスタン2号機についてEDFは、追加点検の2週間延期を今年1月11日付けでASNに要請した。理由として、翌週に予想される寒波の影響で送電グリッドにリスクが生じるとしており、ASNも安全上の観点からこれを了承。新たな点検締め切り日として2月3日を設定した。EDFはまた、145万kWのシボー1、2号機のうち、1号機に関しても追加点検の締め切りを3月末まで延長することを要請した。ASNは現在、IRSNの支援により1、2号機の実証データを分析中で、追加点検がすでに完了した2号機については再稼働条件を検討する予定。1号機の追加点検延期要請に対しては近々、意見書を公表するとしている。

 このような点検は、ASNが2015年4月、フランス初の欧州加圧水型炉(EPR)として建設中のフラマンビル3号機(FL3)で、原子炉容器上蓋と下鏡の鋼材組成に異常が発見されたと発表したことに端を発している。この件から得られる教訓のすべてを学ぶようASNはEDFとアレバNP社に指示しており、現在、以下の3つのプロセスが進行中である。すなわち、
(1)FL3で探知されたのと同様の技術的異常に関する調査を、既存炉のその他の機器について実施。これにより、EDFはSG下鏡で同じ異常を特定することができた。
(2)アレバNP社の機器製造工場における機器の品質審査実施。これにより、同社は傘下のクルーゾー社で原子力鋳鍛造機器の品質証明書に不正が存在することを特定できた。
(3)原子力基本施設(BNI)の許可保有者が実施する契約業者や下請業者の監督活動について審査を開始。ASNによる監視体制と警告メカニズムについても同様である。