米国の研究・政策組織:加州で原子力発電所の早期閉鎖がCO2を増大させたと分析

2017年1月20日

 米国のクリーン・エネルギー研究・政策分析組織である「エンバイロメンタル・プログレス(EP)」は1月16日、カリフォルニア州で過去に原子力発電所建設計画がキャンセルされたことや、既存の原子力発電所が早期閉鎖されたことにより、同州のCO2排出量はそうでなかった場合の2.5倍に増大したとの分析結果を公表した。EPは著名な環境活動家のM.シェレンバーガー氏が創設した団体で、新設計画が取りやめとならず、既存炉がそのまま維持されていれば、加州における総発電電力量の73%は低炭素エネルギーによるものとなり、原子力が全体の48%を供給していたはずだと指摘。これに対して、実績値では低炭素エネルギー源の発電量はたった34%であり、原子力の貢献度も9%に留まったと強調している。

 EPはまず、1960年代~1970年代に州内では複数の原子力新設計画があったものの、サンホアキン発電所やサンデザート発電所、ディアブロキャニオン発電所3~5号機などの計画が着工を間近に控えてキャンセルされたと説明。いくつかの証拠文献名を挙げた上で、J.ブラウン州知事やシエラ・クラブ、天然資源保護協議会(NRDC)を含めた反原子力活動家やグループの反対運動が原因であり、石炭火力でその分の電力需要を満たすことになったとした。また、早期閉鎖を余儀なくされた原子力発電所としては、地元の住民投票が原因となったランチョセコ発電所、蒸気発生器の修理が長期化したことで州の公益事業委から閉鎖を働きかけられたサンオノフレ発電所の事例を挙げた。さらに、2024年と2025年の現行認可満了時に閉鎖が決まったディアブロキャニオン1、2号機については、「2030年までに再生可能エネルギーの発電シェアを50%まで拡大する」とした州政府の政策基準が一因であると述べている。

 今回の計算分析でEPは、これらの原子力発電所の代わりに天然ガス火力発電所が建設されたことを想定。実際には同州では、1970年代から石炭火力が大きなシェアを占めていることから、保守的な試算になったとした。州内の全電源による発電量や発電部門からのCO2排出量については、同州のエネルギー年鑑や大気資源局(CARB)などのデータを活用している。また、人口規模や需要増加率、総発電量、および非化石エネルギー源による供給量といったパラメーターは同一とした上で、原子力発電所の活用によって不要になる石炭火力とガス火力の発電量を減算。これらで削減されるCO2排出量はそれぞれ、kWhあたり0.98kgと0.4kgの炭素集約度で計算した。

 その結果、2014年に同州では、原子力発電所建設計画と既存炉が存続していた場合に比べて3,050万トン余分にCO2が排出されたとEPは明言。これは、バージニアやミネソタ、ニュージャージーなど23州の発電部門による排出量と同量、あるいはそれを上回ったほか、アイダホ、ニューハンプシャー、ロードアイランドなどの8州では、商業部門、発電部門、住宅・産業部門、輸送部門からの合計排出量より多かったと指摘している。