ロシア:鉛冷却高速実証炉を含めた「ブレークスルー」計画で90億ルーブル投資

2017年2月17日

 シベリア西部に位置するロシア・トムスク州の州政府は2月16日、同州における鉛冷却・高速炉のパイロット実証炉「BREST-300」とその燃料製造プラントの建設計画を含めた「ブレークスルー(PRORYV)」プロジェクトで、国営原子力総合企業ロスアトム社が2017年に合計90億ルーブル(=約177億円)の投資を計画していると発表した。15日に同州のS.ジバチキン知事がロスアトム社のA.リハチョフ総裁と会談した際、ロスアトム社の自己資金から70億ルーブル、その他の財源から20億ルーブルを調達すると同総裁から伝えられたもの。電気出力30万kWの「BREST-300」は、2014年9月にエネルギー技術研究所(NIKIET)が詳細設計を完了したと発表しており、運転開始は2020年に予定されている。このため、今年中にトムスク州セベルスクのシベリア化学コンビナート(SCC)で建設工事が始まる可能性があると見られている。着工のタイミングについては、SCC内の老朽設備で廃止措置が始まるのに合わせるということで、ジバチキン知事とリハチョフ総裁が合意した。

ロシアでは国内のエネルギー需要を満たすと共に、天然ウランと使用済燃料の有効活用を可能にするクローズド核燃料サイクルを確立するため、高速中性子炉の実用化を進めている。1969年から電気出力1.2万kWの高速実験炉「BOR-60」がディミトロフグラードで稼働しているほか、60万kWの原型炉「BN-600」、80万kWの実証炉「BN-800」がベロヤルスク原子力発電所で稼働中。2011年に始まった「ブレークスルー」プロジェクトでは、世界の原子力産業界でロシアがリーダー的立場に立てるような、競争力のある製品の創出を目的としている。新たな研究開発基盤を構築するための革新的技術開発として、ナトリウム冷却高速炉と並行して、鉛冷却高速炉の研究開発を進めており、その中でもSCCでは、「BREST-300」と専用の窒化物燃料(MNUP)製造プラント、および同炉から出る使用済燃料の再処理プラントを建設する予定。ロスアトム社傘下の燃料製造企業であるTVEL社の16日付け発表によると、プロジェクトの実施に際して必要となる組織体制や人員計画に関する承認手続がすべて完了したことから、ロスアトム社が現在、スタッフを募集中。「BREST-300」と再処理プラント建設のためのエンジニアリング支援サービス関係スタッフについては、すでに採用を終えたとしている。