NUMOがカナダの深地層処分場計画で国際講演会

2017年3月13日

 原子力発電環境整備機構(NUMO)は3月10日、カナダの使用済燃料処分実施主体である核燃料廃棄物管理機関(NWMO)のK.ナッシュ前理事長を招き、国際講演会を都内で開催した。カナダでは2010年、使用済燃料を地下500m以上の深地層に処分する施設のサイト選定プロセスを開始し、関心表明のあった22地域の自治体を9地域まで絞り込むなど、順調な進展を見せている。このため、NWMOがこれまでに実施してきた活動、特にこれら地域の人々との対話活動をどのように進めてきたかなどを紹介してもらい、カナダにおける処分事業の知識と経験を100余名の日本の参加者と共有した。ナッシュ氏は昨年、NWMOを辞しており、講演内容はあくまで私見であると断った上で、地層処分計画の現状と今後について次のように語った(=写真)。

 地層処分場(DGR)開発は1970年代にカナダ原子力公社(AECL)が開始したが、最初から順調に進んだわけではない。AECLが1989年に提示したDGR概念を環境評価パネルが10年かけて審査した結果、1998年に「概念レベルでは安全だが公衆の支持が実証されなかった」と報告。同パネルによる52項目の提言を受けて2002年に核燃料廃棄物法が成立、NWMOが設立された。
 NWMOは2005年までの3年間に、適応性のある処分代替案について広範な全国調査を実施。意見聴取を行った国民は2,500人の先住民を含む18,000人にのぼった。このほか500人の専門家からも意見を聞いたが、この調査で国民が語ったのは、安全とセキュリティが最優先事項であることや、原子力発電の受益者である現世代が今、責任を持って行動すべきであることなど。このような国民および専門家との対話を通じて、NWMOは2005年に「適応性のある段階的管理(APM)」を策定した。APMでは最も望ましい優先事項として、技術面と管理システム面の両方で処分方針を設定しており、当面はサイト貯蔵や集中管理を行い、最終的に地層処分を行うと明記。カナダ政府は2007年6月にこのAPMを承認した。
 処分事業を実際に実行していくに当たり、NWMOは意思決定に国民を関与させるための関係を構築している。地方自治体レベルでは、原子力施設のある4州で自治体連合フォーラムを形成したほか、既存の「カナダ原子力受け入れ自治体協会」も活用。一般市民とはパネルやオープンハウス、ウェブサイトで対話を行うとともに、先住民アボリジニが参加する様々なフォーラム、複数の政党とも対話の機会を持った。また、原子力の監督規制を管轄する連邦政府、最終的に廃棄物を所有することになる州政府とは、部門横断的な協力フォーラムを設置した。このような人々との緊密な連携に基づいて、NWMOは2008年に9ステップで構成されるサイト選定プロセス案を共同設計。様々な説明会の開催を経て、翌2009年に同プロセス案の準備と試行を行い、2010年から同プロセスを開始するに至っている。
 幸いなことに22地域から処分事業に関心表明があり、それらを対象に招聘をかけ、初期的取り組みとしてNWMO事務所でのブリーフィングや使用済燃料貯蔵設備の視察、安全規制機関との会合、地質条件の審査などを実施。第2ステップの初期スクリーニングで、1地域を不適格として除外した。2014年に第3ステップである「潜在的な適合性の予備評価」の第1段階(机上調査)が完了し、2015年からは9つの有望地域が地質学的調査や制限付き掘削調査を含む第2段階に進んでいる。これを2022年までに終えた後、早ければ2023年に優先サイトを1か所決定。それ以降は専門技術センターの建設を含めたサイト活動を開始する計画である。

「座談会」:処分事業に対する国民の理解を得るには
 ナッシュ氏の講演後は、同氏とNPO法人・国際環境経済研究所の竹内純子理事、近藤駿介NUMO理事長を交えた座談会が行われ、竹内氏は日本でも国の作業部会が様々に議論したにも拘わらず、廃棄物処分がカナダと同じようにいかない理由は何故かという疑問を投げかけた。これに対して近藤理事長は、環境調査の受け入れを求めて2002年から地方自治体への説明を全国各地で行ったものの、この当時の日本には地下研究所すらなく、地層処分という言葉を使ったところで正確に処分場がどういうものか説明することが出来なかったと指摘。カナダのように、使用済燃料の貯蔵施設を実際に見てもらうことが大きなインパクトを与える上では非常に重要で、幸い日本でも、今は幌延などの見学を通じて「見方がすっかり変わった」と言ってもらえることが多くなったと述べた。
 ナッシュ氏は、カナダ国民の理解を得る上で、NWMO設立当初の幹部3名(すべて女性)が社会的側面から対話を展開したことが上手くいった要因だと指摘。初代理事長のリズ・ダウズウェル氏は環境活動家として名を馳せた気候科学者であり、政府高官でもあったため、国民にどのように対話を投げかけていくべきか熟知していた。処分事業を進めていくには、適切な動機や意志があってもエンジニアや科学者だけではダメで、「科学と社会の『結婚』が必要だ」としていたダウズウェル氏の弁を紹介。確かに信頼できる科学者は必要だが、まず社会科学を使って対話のドアを開き、信頼を醸成すること、思慮の行き届いた形で国民に関与してもらうことが最も重要との認識を明らかにした。