サウジアラビア:中国製高温ガス炉のフィージビリティ・スタディ実施へ

2017年3月21日

©CNEC

 サウジアラビアの「アブドラ国王原子力・再生可能エネルギー都市公団(K.A .CARE)」は3月16日、国内で中国製高温ガス炉(HTR)を建設するための共同フィージビリティ・スタディ(FS)の実施について、中国の原子炉建設会社である中国核工業建設集団公司(CNEC)と協力協定を締結した(=写真)。今年1月に調印した了解覚書に基づくもので、両者はその後、サイトの選定や規制体制の構築、人材育成その他の側面について、FSの実施協力協定締結に向けた諸条件の検討を進めていた。今後はHTRプロジェクトに関する投資や建設工事、知的所有権関係の協力、原子力サプライ・チェーンの構築といった課題について、共同で解決策を模索する。同FSはまた、サウジ政府がHTRプロジェクトの実施判断を下す際、判断材料の1つになるとしている。

 サウジは原油資源を温存しつつ国内の電力需要急増に対処するため、2040年までに1,200万~1,800万kWの原子力発電設備建設を目標としている。すでに様々な原子力開発利用国と原子力平和利用協力協定を締結済みで、韓国とは2015年3月、韓国原子力研究所(KAERI)が中東諸国向けに設計した海水脱塩と熱電併給が可能なモジュール式小型炉「SMART」について、サウジ国内で2基建設する可能性を探るための了解覚書を締結した。一方の中国は、陸と海の新シルクロード構想「一帯一路」に基づき、中国が知的財産権を有する原子炉を世界中に輸出していく方針。脱塩や熱電併給などの多目的利用が可能で固有の安全性を有する第4世代のHTRは、有力な輸出用設計の1つに位置付けられている。CNECは中国のHTR開発で中心的役割を担う清華大学と協力関係にあり、これに華能集団公司を加えた3者は現在、電気出力20万kWの実証炉を山東省石島湾で建設中である。

 今回の協力協定は、アジア諸国を歴訪していたサウジのサルマン国王が、北京で習近平国家主席と会談した際に結ばれており、両首脳の立ち会いの下でK.A .CAREのH.ヤマニ総裁とCNECの顧軍・総経理が署名した。これと同時にK.A .CAREは、原子力安全の規制に関する協力で中国環境保護部と了解覚書を締結。サウジの地質調査所は、ウランとトリウムの鉱床に関する協力でCNECと了解覚書を締結している。