英国の設計認証審査、AP1000は3月末、ABWRは年末に完了へ

2017年3月23日

 英国の原子力規制局(ONR)と環境庁(EA)およびウェールズ自然保護機関(NRW)は3月22日、国内で新たに建設予定の原子炉設計について実施している包括的設計審査(GDA)の、四半期毎(2016年11月~2017年1月)の審査状況報告書を公表した。その中で、同審査の完了を意味するONRの設計容認確認書(DAC)とEAの設計容認声明書(SoDA)の発給が今月末にもウェスチングハウス(WH)社製AP1000設計に、また、日立GE社製UK-ABWRについては2017年末に行われる見通しになったことを明らかにした。AP1000は、東芝が筆頭株主となっているニュージェネレーション(NuGen)社が西カンブリア地方ムーアサイドで最大380万kW(グロス)分を建設予定である。一方、UK-ABWRは、日立製作所が英国で所有するホライズン・ニュークリア・パワー社がウェールズ地方のウィルヴァ・ニューウィッド計画とサウス・グロスターシャーのオールドベリー計画で540万kW分の建設を計画。英国で数十年ぶりというこれらの新設計画において、大きなハードルの1つがクリアされることになる。同報告書はまた、中国が輸出用第3世代原子炉設計の1つと位置付ける「華龍一号」の英国版(UK-HPR1000)について、GDAが1月19日から正式に開始されたと明記。同設計は、EDFエナジー社が中国広核集団有限公司(CGN)との協力により、エセックス州で建設するブラッドウェルB原子力発電所で採用される予定である。

 GDAではこれまで、サマセット州のヒンクリーポイントC原子力発電所で採用予定の仏アレバ社製欧州加圧水型炉(EPR)設計についてのみ、DACとSoDAが2012年12月に発給された。AP1000の審査はEPRと同時期に始まったものの、採用顧客が未定だった期間に一時中断されており、再開されたのは2014年1月のことである。今期報告書の対象期間中にAP1000の審査は作業ペースや提出物などの面で大きく前進しており、今期だけでWH社が提出した163文書は最終段階における総提出物の約20%に相当。ONRの担当チームにとっては莫大な作業量になったが、3月末の審査完了を目指して、すべての審査レベルでWH社と一層緊密に連携し、作業の加速を図ったとした。大部分の分野で評価作業が完了し、構造健全性分野に関する評価報告書の作成も進んでいるが、技術的に未解決の作業も残っているため、進むべき方向性に自信はあるものの、審査プロジェクトとしてのリスクは引き続き存在するとの認識を示している。 

 UK-ABWRの審査は現在、最終段階の第4ステップにあり、必要とされる文書の90%以上を日立GE社は提出済み。残っているのは主に建設前安全報告書(PCSR)関係であるため、今年の夏にもONRらは技術面での詳細作業を終え、12月にはDACとSoDAの発給判断を裏付ける第4ステップの報告書を作成するとした。また、EAとNRWは昨年12月から、同設計に関する公開協議を12週間にわたって実施。環境関係機関が同設計の詳細評価に関して下した予備的結論や同設計の環境的側面について、イングランド地方とウェールズ地方における複数回の関係者集会、電子メール等で意見を聴取した。今期報告書の対象期間中に技術的に重要な課題は新たに浮上しておらず、ONRは確率論的安全解析で未解決だった「規制問題(RI)」の1つに関連する作業を完了。さらに、RIの前段階の問題提起である「追加作業を要求する規制上の課題(RO)」についても、今後数多くが解決される見通しだと明言した。

 UK-HPR1000のGDAについては、1月10日にONRらが政府からの開始要請を受理。これは、審査活動の管理会社としてフランス電力(EDF)とCGNが設立した「ジェネラル・ニュークリア・システム(GNS)社」について、GDAにともなう経費負担能力や合理的時間枠内での審査完了能力が適切であると確認されたことによる。今期報告書の対象期間中にONRらとGNS社はGDAの経費負担協定を締結しており、これを受けてONRらは担当チームを編成するとともに、3月中に中国で技術ワークショップを開催する準備作業を開始した。GDAの完了は2021年を予定している。