原子力安全条約の検討会合:「機器製造の監視継続、高レベルの安全確保で重要」

2017年4月13日

 オーストリアのウィーンで開催されていた「原子力の安全に関する条約(CNS)」の第7回検討会議が7日に閉幕した。2週間にわたった今回の検討会議で、締約国の代表団は原子力安全文化と効果的な法的枠組を維持・強化する重要性や、原子力サプライ・チェーン内で予防的措置を執行する重要性について集中的に協議。高いレベルの安全性を達成するためには、人的および財政的な資源の制約や高経年化施設における安全性の確保に取り組むとともに、国境を接する国同士で調和の取れた緊急時計画を策定する必要性に対処する--などの意見が提示された。また、サプライ・チェーンの監視を継続する必要性が認識されたことも明らかにしている。

 原子力安全条約は1986年のチェルノブイリ事故を契機に、原子力発電のあらゆる側面で高水準の安全性を世界的に達成・維持する目的で作成された国際条約。国際原子力機関(IAEA)が事務局を務めている。日本は1996年の発効当初から加盟しているが、現在の締約国は81か国。3年毎に開催される検討会議では、CNSが規定した義務を履行するため各国内で取った措置についての報告義務があり、今回は79か国が提出した国内報告書について突っ込んだ議論と相互評価が行われた。

 検討会議を総括する報告書の中で締約国は、それぞれの規制当局による監視を強化し安全文化を実践していくのに際し、IAEAには継続的に支援ガイドラインを作成してほしいと要請した。これに関してIAEAのJ.レンティッホ原子力安全・セキュリティ担当事務次長は、「安全性の維持では、各国が長期にわたって努力と警戒心を怠らないことが肝要だ」と指摘。問題を早期に探知・評価する効果的なメカニズム、そして学んだ教訓を共有するネットワークも必要になるとの認識を示した。同事務次長はまた、同一の取替用部品の供給不足、規格に合わない製品や不正な偽造品を見極める必要性という観点から、サプライ・チェーンの継続的な監視は、原子力発電の利用国と導入検討国にとって共通の課題だと述べた。さらに、原子炉製造が可能と認定されたサプライヤー数が縮減していることから、原子力基準を満たせるメーカーの利用は今後一層難しくなると指摘している。

 締約国はこのほか、施設の安全性を自己評価し改善していく上で、CNS検討会議その他の国際的な相互レビュー・プロセスは非常に価値があると表明。検討会議のR.ジャメル議長も、「このようなプロセスにより、安全問題に関する各国の豊富な経験が効果的に明らかにされ、原子力を長く利用している国と利用を始めたばかりの国の双方で役立てることができる」と述べた。同議長はまた、このようなプロセスの効果と効率をさらに強化・促進するための加盟国への協力が、IAEAその他の国際機関にとっても重要であるとの考えを示した。