米エネ省がメリーランド大・研究炉の運転継続に協力

2017年4月18日

 米エネルギー省(DOE)は4月17日、メリーランド大学カレッジパーク校(UMD)にある研究炉の運転継続を可能にするため、原子力局(NE)の新しい政策イニシアチブ「研究炉インフラ・プログラム」に基づく緊急措置として、軽度の照射を受けた核燃料をアイダホ国立研究所(INL)から提供することになったと発表した。1973年に設置されたこの研究炉は、人材訓練や放射性同位体の製造用としてジェネラル・アトミックス(GA)社が開発した「TRIGA」炉。これまで数多くの若手原子力研究者が同炉で研究・訓練を実施してきたが、専用の特殊燃料が商業市場で不足していることから、閉鎖のリスクにさらされていた。DOE-NEの発表によると、DOE環境管理局や原子力規制委員会(NRC)、INLの管理運営を担当するバッテル・エネルギー同盟、フルアー社のアイダホ支社、およびメリーランド大学が協働したことにより、INLに貯蔵されていた核燃料は3月20日付けでUMDに移送済み。NEの政策イニシアチブの一部として今後、実施が期待されている様々なTRIGA研究炉施設に対する最初の出荷になったと強調した。

 TRIGA炉は世界中で最も数多く建設された研究炉で、熱出力は250kW。大学や企業、政府機関における関連の人材訓練、放射性同位体製造のほか、商業研究、非破壊試験などにも広く利用されている。GA社はこれまでに24か国で様々な仕様のTRIGA炉を66基建設しており、日本では立教大学や武蔵工業大学の原子力研究所に設置された。使用する燃料はGA社が1950年代に開発した水素燃料技術に基づいており、低濃縮ウランと水素化したジルコニウムによる合金燃料(UZrH)である。GA社と仏アレバ社傘下のCERCA社が折半出資する合弁事業体が同燃料をフランスで製造・供給していたが、「研究炉インフラ・プログラム」を担当するINLの燃料マネージャーによると、近年、TRIGA炉用の新燃料は入手不能で、2020年頃まで一部の材料調達が見込めない状況だという。このため、TRIGA炉でかつて短期間使用したものの核分裂エネルギーがまだ多く残存する在庫燃料を、INLの原子力技術エンジニアリング・センターから回収し、NRCの正式な許可の下でUMDに移送したもの。

 米国ではこれまで、200基以上の研究炉が設置されたと言われているが、現在、NRCが規制対象とする研究炉は42基(DOEの研究炉は対象外)。このうち運転可能なのは31基で、新たな研究炉の建設計画がない一方、既存設備の老朽化や利用率の低下、専用燃料の調達・処理問題などが浮上しつつある。NEの政策イニシアチブは、このような問題を抱えたTRIGA研究炉を運転可能な状態にすることを目的としており、DOEと大学が連携することで、既存の在庫燃料を上手に活用しながら学生の原子力教育を続けることができると指摘。INLとしても、手持ちの在庫燃料削減と大学の研究プログラム支援という機会が得られたことに感謝するとの認識を示している。