米エネ省長官、信頼性のあるベースロード電源確保で電力市場の調査 指示

2017年4月26日

 米原子力エネルギー協会(NEI)は4月19日、信頼性の高い電力システムを確保するための政策提言に向け、エネルギー省(DOE)のR.ペリー長官が国内電力市場や送電網に関する60日間の調査を指示したことが明らかになったと発表した。DOEの主任スタッフに対し「19日までに調査の実施プランを提示するよう」命じた14日付けの長官メモが公表されたもので、長官は、良好に機能する安定した送電網を維持するには、石炭や天然ガス、原子力、水力といったベースロード電源が必要である一方、過去数年間に送電網の専門家からは、そうした重要電源が損なわれているとの懸念が聞かれるようになったと指摘。このため、卸電力市場における連邦政府の介入度や、ベースロード電源の早期閉鎖原因となっている規制上の重荷についても調査する方針を明らかにしている。米国では近年、競争市場環境下にある原子力発電所の収益が大幅に悪化し、早期閉鎖のリスクにさらされていることから、NEIはトランプ政権のこのような取り組みを称賛。この調査を通じて、CO2を排出しないベースロード電源である原子力の価値が正当に評価され、新規建設への投資や既存炉の運転継続で支援措置が早急に取られることへの期待を表明した。

 長官のメモによると、国内電力システムには国の経済や国家安全保障にさえ影響する大きな変化が起こりつつあり、これには詳細な調査が必要である。具体的には、多くの人々がベースロード電力の供給体制と補償方法に疑問を呈す一方、発電ミックスの多様性が縮減したことにより、送電網が一時的な機能停止から回復する力(回復力)やベースロード電力が影響を受けるとの意見があると長官は指摘。こうしたことの原因の一部は、石炭火力を削減するため前政権が導入した連邦規制であり、これにより雇用や経済成長が損なわれるとともに、将来的に送電網の性能を低下させる怖れもあるとした。最終的に複数の分析家が実証したこととしては、他のエネルギー源を犠牲にして1つのエネルギー源を優遇した連邦政府の補助金が市場を歪め、適切なベースロード電源を維持する上で急性的かつ慢性的な課題を生じさせている点だと長官は明言。これにより、信頼性の高いすべての電源に影響が及ぶとの認識を示した。

 ペリー長官は、これらの問題や関連課題については厳密に調査・分析しなければならないとして、分析結果は連邦政府が送電網の防護で健全な政策を策定する一助になると強調。トランプ政権としては、送電網の回復力や信頼性、適正な価格、燃料の供給保証などを政策策定の原則とする方針であり、60日間の調査においては、次の事項を重点とするよう主任スタッフに命じている。すなわち、
 

 (1)連邦政府による政策的な介入の度合いや、それによる発電ミックスの変化が市場形成において当初の政策想定からどの程度相反する課題を引き起こしているか--などを含めた卸電力市場の進展状況、

 (2)サイト内で燃料供給が可能という電源の特質や、送電網の回復力強化につながるなどのファクターに対して、卸エネルギー市場と容量市場は適切な補償を与えているか、

 (3)ベースロード電源が早期閉鎖を強いられる点について、規制上の要件や指令、税金、補助金政策にどの程度の責任があるか、--である。