南アの高等裁、政府の原子力新設計画を違法と裁定

2017年4月27日

 南アフリカ共和国の高等裁判所・西ケープ州支部は4月26日、環境保護団体による訴えを支持し、政府の原子力新設計画についてエネルギー大臣が2013年と2016年に下した2つの決定は違法・違憲であり、無効とするよう指示する裁定を下した。この新設計画を進めるために政府が米国、韓国、ロシアと締結していた原子力協力関係の政府間協定(IGA)についても同様の裁定を下しており、すべて無効であると言いわたした。2030年までに960万kWの原子力発電設備建設を目指して、南ア政府は昨年12月、入札提案依頼書(RFP)の前段階にあたる情報提供依頼書(RFI)を世界の原子力産業界に発出していたが、今回の裁定により新設計画の先行きは一転して不透明になった。今月、着任したばかりのM.クバイ・エネ相は同日の声明で、判決文の内容を精査するよう省内に指示したとしており、この件に関する見解は改めて表明すると述べた。新設計画について南ア政府は、まだ、いかなる取引も始めておらず調達契約も結んでいないが、米国、韓国、ロシア、中国、およびフランスと結んだIGAが存在することは事実だと強調している。

 今回の訴訟で2つの環境保護団体から訴えられていたのは、エネ相(当時)と大統領のほか、南ア国家エネルギー規制局(NERSA)、南ア電力公社(ESKOM)、および議会の上下両院議長である。異議を申し立てられた2つの決定のうち1つ目はエネ相が2013年11月に署名したもので、2010年~2030年までの「統合資源計画(IRP)」に基づき、南アでは960万kW分の原子力発電設備が新たに必要だとする内容。原告らの求めに応じて、これが官報に掲載されたのは2015年12月だが、調達担当者であるエネ相には新規設備の調達プロセスを開始する前に、NERSAとともに公正な国民参加手続を踏む必要があった。2つ目はエネ相が2016年12月8日に公表した決定で、内容は最初のものとほぼ同じだが、新規設備の調達担当者としてESKOM社が特定されていた。これも同年12月14日付けの官報に掲載されるまで数か月間延期されるなど、過度の遅れが問題視されたほか、NERSAはこれら2つの決定を不公正な手順で承認したと糾弾された。また、南ア政府は原子力協力に関するIGAを1995年8月に米国と、2010年10月に韓国と、2014年9月にロシアと締結したが、これら3つのIGAがエネ相により議会に提出されたのは2015年6月のこと。最初のエネ相決定が官報に掲載される前であったことから、憲法との整合性が問われていた。

 南アではクバーグ原子力発電所の2基(各97万kWのPWR)が1980年代半ばから稼働中だが、これらに新たな設備を加えることで、南アは総発電量における原子力シェアを14%まで倍増。同様に再生可能エネルギーのシェアも16%まで拡大し、温室効果ガスを排出する石炭火力への依存度を削減する計画だが、原子力機器の国産化も南ア全体を工業化する広範なプロセスの一部として進める考えだ。新設計画のサイトとしては、東ケープ州タイスプントと西ケープ州ドイネフォンテインの2箇所が特定されており、昨年12月に発出したRFIに対しては世界中の27社が情報提供の意志があると回答。この中には、中国国家核電技術公司(SNPTC)、フランス電力(EDF)、ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社、韓国電力公社(KEPCO)が含まれていた。