米エクセロン社、TMI原子力発電所1号機を2019年に早期閉鎖へ

2017年5月31日

 米国最大の原子力発電事業者であるエクセロン社は5月29日、ペンシルベニア州で所有するスリーマイルアイランド(TMI)原子力発電所1号機(89万kWのPWR)について、連邦政府や州政府が原子力発電の利点に相応の補償を与えるエネルギー政策を取らない限り、2019年9月末頃に永久閉鎖するとの方針を表明した。炉心溶融事故を起こした2号機が1979年に閉鎖される一方、1号機は当初の運転期間40年に加えて20年の期間延長が認められ、2034年まで運転継続が可能だった。しかし、電力卸売価格の長期的な低下や再生可能エネルギー源に対する州政府の優遇政策などにより、同炉の収益は過去5年にわたって低迷した。ペンシルベニア州など北東部地域を管轄する地域送電機関(RTO)「PJMインターコネクション(PJM)」が2020年~2021年の設備容量確保のために実施したオークションでも、同炉が勝ち残れなかったことをエクセロン社は23日に公表。すでに過去2回のPJMオークションで競り負けた同炉が、この事業期間にも設備容量支払を受け取れなくなったことを意味しており、運転の継続にはイリノイ州とニューヨーク(NY)州で採択されたのと同様の政策がペンシルベニア州でも必要との見通しをこの段階で明らかにしていた。

 今回の決定にともない、同社ではすでに閉鎖に向けた第一段階の手続を開始。PJMを含む主要なステークホルダーに閉鎖方針を伝えるとともに、米原子力規制委員会(NRC)には30日以内に通知を行う。また、2017年分の資産償却額6,500万~1億1,000万ドルを直ちに一括償却するほか、閉鎖日までの償却額約10億~11億ドルの手続も加速。同炉の長期的な運転継続に必要とされていた資本投資プロジェクトを打ち切り、2019年に予定していた交換用燃料の購入と計画停止用作業員約1,500人の手配もキャンセルするとしている。エクセロン社の認識としては、同炉の閉鎖によりペンシルベニア州では大気汚染が進み、送電網が一時的な機能停止から回復する力も低下する。顧客の支払う電気代も値上がりするほか、同発電所の直接雇用675名分を含む数千もの高給雇用が地元で失われ、州経済は悪化する。州内の原子力発電所は同州における無炭素発電量の93%を賄い、3,700万トンのCO2排出削減に貢献しているにも拘わらず、州政府が「代替エネルギー・ポートフォリオ基準(AEPS)」の中で支援する16のクリーン・エネルギー源に原子力が含まれないことへの不満感を同社は示した。

 NY州では2016年8月、州北部3サイトの原子力発電所に対する補助金プログラムを盛り込んだ包括的温暖化防止政策「クリーン・エネルギー基準(CES)」を公益事業委員会が承認。これにより、早期閉鎖が決まっていたフィッツパトリック原子力発電所は、エクセロン社が購入した上で運転継続することになった。イリノイ州でも、発電量に応じた支払がクレジット取引を通じて原子力発電所に10年間提供される制度「CO2のゼロ排出基準(ZES)」を盛り込んだ「将来のエネルギー雇用法(FEJA)」が2016年末に成立。エクセロン社は閉鎖予定だったクリントン、クアド・シティーズの両原子力発電所で少なくとも10年間、運転継続が可能になると述べた。1週間前のPJMオークションで敗北したクアド・シティーズ発電所は今のところ、FEJAのゼロ排出クレジット・プログラムの参加発電所に選定されていないが、TMI原子力発電所の運転継続を可能とする複数の解決策の中でも、エクセロン社は州政府によるAEPSの修正やゼロ排出クレジット・プログラムの設置を指摘。今後もペンシルベニア州のステークホルダーとともに、州にとって最良の解決策を模索していきたいとしている。