韓国の商業炉としては初めて、古里1号機が予定どおり永久閉鎖

2017年6月19日

 韓国で最も古い古里原子力発電所1号機(PWR、58.7万kW)が6月18日の深夜、同国の商業炉としては初めて、2年前に設定された日程通りに永久閉鎖された。1978年に運転開始した同炉は2007年に当初の運転期間である30年が経過した後、原子力安全委員会から10年間の期間延長許可を得て韓国水力・原子力会社(KHNP)が運転を継続していた。しかし、産業通商資源省(MOTIE)は2015年6月、同炉の経済性や地元住民の受容性などを考慮した上で、現行の運転認可満了後は期間延長を申請しないようKHNP社に勧告。これを受けて同社の理事会は、2017年6月をもって同炉を永久閉鎖する方針を議決していた。大統領府の発表によると、今年5月に就任したばかりの文在寅(ムン・ジェイン)大統領は19日午前、釜山市機張郡の同原子力発電所本部で開催された永久停止宣言式に出席し、発電所職員や地元住民と自治体、環境市民団体、原子力産業界の代表など約230人を前に演説を行った。大統領は、古里1号機を40年にわたって稼働させた職員の労苦を讃える一方、同炉の永久停止は韓国社会が脱原子力に向けて踏み出す第一歩であり、新たな市場展開が形成される切っ掛けになると強調。原子力産業界が同炉によって廃止措置の実施能力を習得し、世界市場への進出に向けて努力することを要請した。また未確認の報道によると、文大統領は同時に、石炭や原子力に依存する現在の発電体系から脱却し、再生可能エネルギーとLNGを支援する方針を表明。既存の原子炉では今後、運転期間の延長を行わず、新たな原子炉の建設計画も中止すると述べたことが伝えられている。

 ウェスチングハウス(WH)社のPWR設計を採用した古里1号機は、韓国初の商業炉として1971年に建設工事が開始され、1977年に初めて臨界条件を達成。約40年間の営業運転期間中に1,552億6,000万kWhを発電した。KHNP社は同炉の閉鎖日程を公表した後、2016年6月に永久停止操作変更許可を安全委に申請。安全委は、原子炉停止後にすべての使用済燃料を貯蔵するプールの容量や臨界安全性、機器を冷却する機能、緊急時電源の維持計画などを審査した上で、今月9日に同許可の発給を承認した。安全委の7日付けの発表によると、KHNP社は永久停止した日から5年以内に、同炉の解体計画などを盛り込んだ申請書を提出する予定で、設備や機器の撤去および除染作業を通じて、原子力安全法の適用対象から除外するための活動を行うとしている。

 韓国では昨年12月、WH社の130万kW級PWR設計「システム80+」をベースに韓国が開発した「APR1400」を採用した新古里3号機(PWR、140万kW)が国内25基目の商業炉として営業運転を開始した。同設計は、韓国電力公社(KEPCO)の企業連合が2009年末にアラブ首長国連邦(UAE)で受注したバラカ原子力発電所(140万kW級PWR×4基)建設計画にも採用されており、知識経済省(現MOTIE)は翌2010年、原子炉80基を2030年までに輸出するなどの目標を明記した「原子力発電輸出産業化戦略」を策定した。MOTIEとしても2015年7月、原子力発電設備を2029年までに全体の約28%まで拡大する「電力需給基本計画案」を策定。現在、「APR1400」設計を採用した新古里4号機と新ハンウル(新蔚珍)1、2号機が建設中のほか、後続の新古里5、6号機建設計画に対し、安全委は2016年6月に建設許可を発給した。

 しかし、韓国メディアの報道によると、罷免された朴槿恵前大統領との違いを強調して当選した文大統領は、選挙期間中に「原発ゼロの国を40年後に作る」と公約していた模様。総発電量に占める原子力シェアを2030年までに現在の約30%から18%に下げるなど、脱原発ロードマップの策定を公言していたとの情報もある。このため、計画中のプロジェクトは元より建設中の計画についても、打ち切られる可能性を示唆する声が上がっている。