仏環境相、2025年までに最大17基の閉鎖可能性 表明

2017年7月12日

 フランス環境連帯移行省のN.ユロ大臣は7月10日、総発電量に占める原子力の割合を現在の75%から2025年までに50%まで削減するため、最大で17基の商業用原子炉を永久閉鎖する可能性があるとの認識を表明した。同日にRTLラジオ・ネットワークのインタビューで答えたもので、「この目標を達成しようとするなら、原子炉を1基ではなく複数、閉鎖する必要があることは誰でも分かる」と指摘。実際にどの原子炉を閉鎖すべきかは調べてみなければならないと述べ、具体的に名指しすることは避けた。同国では8か月にわたった全国的な討論の結果、「緑の成長に向けたエネルギー移行法」が2015年に成立。これにより、F.オランド前大統領が公約としていた原子力発電シェアの削減のほかに、原子力発電設備を現状レベルの6,320万kWに制限することが決定しており、国内の商業用原子炉全58基を所有・運転するフランス電力(EDF)は今年4月、最も古いフェッセンハイム原子力発電所(90万kWのPWR×2基)の永久閉鎖は、現在建設中のフラマンビル原子力発電所3号機(163万kWの第3世代PWR)の起動日に実行する、などの条件を理事会で承認した。今年5月に発足したE.マクロン政権はこのような前政権のエネルギー政策を踏襲すると公言しており、ユロ大臣も、電力消費量の削減と電源の多様化を図りつつ、エネルギー移行法の目標達成を機械的に進めるなら、多数の原子炉を閉鎖することになると説明している。

 このインタビューに先だつ7月6日、ユロ大臣はパリ協定でフランスが義務付けられた誓約の現実化やエネルギーの移行を加速するため、マクロン大統領とフィリップ首相の要請を受けて「気候計画(Plan Climat)」を開始すると発表した。CO2排出量の削減で同国がこれまで掲げてきた目標は、パリ協定の誓約達成には不十分であり、マクロン政権はさらに意欲的な目標を、さらに迅速に達成すると明言。大気中CO2の排出量と吸収量が常に一定に保たれるという「カーボン・ニュートラル」の状態を2050年までに実現するため、「気候計画」の2大要素である熱意と団結を通じて化石燃料の使用を停止したり、フランス国民の生活を改善するなど、様々な手段を講じるとした。具体的には、2040年までにガソリン車とディーゼル車の販売を終了して電気自動車を普及させる、発電部門では2022年までに石炭火力発電所を全廃する、などを明記。これにともなうエネルギー供給量の不足は、再生可能エネルギー源を急速に推進して補うことなどを示唆した。

 「気候計画」の中で原子力は触れられておらず、ユロ大臣が述べたように複数の原子炉が閉鎖されるとしたら、1980年代に主に営業運転を開始した32基の90万kW級PWR(フェッセンハイム発電所の2基を除く)が対象との見方がある。しかし、これらの運転期間を40年以上に延長するため、EDFは安全レベルの維持を目的とした大規模な改修計画「グラン・カレナージュ」を2011年に発表。2014年から2025年までの11年間に550億ユーロ(約7兆1,600億円)を投入する計画だが、40年以上の運転継続に対する規制当局の見解は2019年頃に公表されると伝えられている。