サウジ内閣、大型炉建設含む国家原子力プロジェクトの起ち上げ 承認

2017年7月26日

 サウジアラビアの国営サウジ通信は7月25日、内閣が前日に「国家原子力プロジェクト」の起ち上げを承認したことを伝えた。大型炉2基のほかに小型炉の建設も明確に視野に入れる内容で、経済開発評議会の議長を務めるムハンマド・ビン・サルマン皇太子兼第1副首相の提案に基づくもの。同国では原油資源を温存しつつ国内の電力需要増に対処するため、2040年までに1,200万~1,800万kWの原子力発電設備開発を担当する「アブドラ国王原子力・再生可能エネルギー都市公団(K.A .CARE)」を、国王の勅命により2010年4月に創設した。これまでにフランスやロシア、アルゼンチン、中国、韓国などと原子力平和利用分野の協力協定を締結、あるいは仮調印しており、仏アレバ社製「欧州加圧水型炉(EPR)」や韓国製小型炉「SMART」、中国製高温ガス炉(HTR)を国内で建設する実行可能性調査の実施で、すでに関係国と合意。今後もK.A .CAREを中心に、原子力を電力供給源としてだけでなく脱塩その他に役立つものとして具体的に導入する計画を進め、同国にとって最適なエネルギー・ミックスを構築していくことになる。

 K.A .CAREのH.ヤマニ総裁は、今回の閣議決定によりサウジアラビアは原子力の平和利用から様々な国益を得ることができると指摘。国家原子力プロジェクトの主な構成要素として、1基あたり120~160万kWの大型炉建設が含まれており、これらは年間を通じて送電網へのベースロード電力供給に貢献可能だとした。このため、K.A .CAREでは現在、大型炉2基および小型の一体型原子炉を複数建設するのに必要な技術調査を行っているところで、これらを通じてサウジアラビアは原子力技術を開発・獲得し、送電網から切り離された地域にも電力を供給できると述べた。また、プロジェクトの目的が原子力の平和利用であり、多国間および2国間の関係協定や取り決めを遵守する方針を強調。これには、国際原子力機関(IAEA)が原子力プログラムの新規導入国向けに策定したガイダンスも含まれると説明した。さらに、国際的な安全基準を考慮しつつ同プロジェクトを進めるため、原子力・放射線安全当局も規制機関として設置する予定。これにより、住民や環境および原子力施設が、国際的な良慣行に準じて防護されることになるとしている。

 このほか同総裁は、国内ウラン資源開発への投資も同プロジェクトに明記されたと指摘。ウラン鉱石の探査・生産技術について国内の専門家を育成するとともに、プロジェクトで得られる経験を活用して、そうした技術を国産化したいとの抱負を明らかにしている。