IAEA、トルコのアックユで立地評価レビュー(SEED)ミッション 完了

2017年8月2日

 国際原子力機関(IAEA)は7月31日、トルコが初の原子力発電所を建設予定の地中海沿岸のアックユ・サイトに「立地評価・安全設計レビュー(SEED)」ミッションを派遣し、5日間のレビュー作業を終えたと発表した。同サイトで4基の120万kW級ロシア型PWR(VVER)を建設するのに先だち、様々な許認可手続で必要となる安全審査能力を強化するため、トルコ原子力庁(TAEK)が招聘したもの。2023年に初号機の運転認可発給が予定されている同発電所では、外部ハザードに対する防護設計について、2015年にSEEDミッションが関連のサイト・パラメーターを審査済みであり、今回はそのフォローアップという位置付けになる。トルコのエネルギー市場規制庁(EPDK)は今年6月、発電所の建設を請け負ったロシアのプロジェクト企業「アックユ原子力発電会社(ANPP)」に対して、49年間有効な発電許可を発給した。その後、トルコの大手エネルギー施設企業3社の連合体がANPP社に49%出資することで合意している。

 SEEDミッションで想定した外部ハザードは、津波と地震、航空機衝突、および地盤関係の地質工学的ハザードなどで、欧州の専門家2名とIAEAスタッフ2名で構成されるIAEAチームは、トルコの首都アンカラでTAEKの総裁と会談。このほか、技術専門家や規制当局の安全性専門家、同発電所の就労予定者、およびその他の技術支援専門家と協議を行った。その結果、IAEAチームはトルコの良好事例として、「予備的安全解析報告書(PSAR)の中に、津波と地震および航空機衝突の安全裕度分析に必要な条項が設計ベースと設計外ベースの両方で含まれている」と指摘。一方、さらなる強化が必要な部分としては、次の2点を勧告した。すなわち、(1)最新のハザード調査を反映してPSARを改定すべき、(2)PSARの中で、安全裕度の実証方法を明確に特定すべき--などだ。同チームは今後、3か月以内に最終報告書をとりまとめて、トルコ政府に提出する予定である。

 SEEDは2014年に開始されたサービスで、原子力プログラム開発の様々な段階において、IAEA加盟国に支援を行うことを目的としている。原子力の新規導入を計画している国に対しては、サイト選定段階でのレビュー・サービスを提供。つまり、サイトの選定や評価、構造物の設計、サイトの外部ハザードに対する防護システムや機器などについて、安全審査サービスを行っている。トルコではすでに、複数回のSEEDミッションを受け入れており、IAEAの2014年版「原子力安全レビュー」報告書によると、サイト認可申請のレビューと作成、追加情報請求書の作成、セーフティケース(安全性保証文書)の作成で使用する安全評価報告書の準備などについて2週間の実地教育を実施。サイトと外部事象の分野で、規制スタッフの技術的知識を強化したという。また、2016年11月には、黒海沿岸のシノップ・サイトで採用予定の原子炉設計「ATMEA1」について、SEEDミッションは耐震安全性評価を行った。同設計は仏アレバ社と三菱重工(MHI)の合弁事業体「ATMEA社」が開発したことから、IAEAはMHIの神戸造船所にSEEDの専門家チームを派遣。5名の専門家が同設計の耐震設計を裏付ける技術的手法を評価し、最も厳しいと言われるIAEAの最新基準に適合していることを保証した。