米BWXT社、NASAから有人火星ミッション用原子炉の設計契約 受注

2017年8月7日

 米国のBWXT社は8月3日、将来的に火星への有人ミッションに使用される熱核推進式原子炉の概念設計契約をアメリカ航空宇宙局(NASA)から受注した。2030年代に人類を火星に到達させるという構想の下、NASAは今年4月に火星探査を成功させる具体的プランとして、月に近い軌道上の「宇宙基地」、および同基地から火星まで飛ぶ「宇宙船」の製造計画を公表。BWXT社が受注した原子炉は、地球軌道から火星まで往復する宇宙船の推進用熱核ロケット・エンジンの一部に使われることになる。NASAの革新的技術開発プログラムによると、ロケットを超高速に加速する上で熱核による推進力(NTP)技術は、かつてないほど有望。NTPを利用したロケットであれば、過去40年間に化学反応式エンジンの標準となったスペース・シャトルのメイン・エンジンの推進効率を倍加できる。人類が火星やさらに遠くの太陽系に進出するにはNTPこそ唯一の、真に実行可能なオプションであり、火星までの航行時間は現在の6か月から4か月に短縮されるとしている。

 BWXT社はバブコック&ウィルコックス(B&W)社が2014年に分社化した原子力機器・サービス事業と連邦政府対応原子力事業の専門会社で、合弁事業体を通じて、すでに12以上のエネルギー省(DOE)関連施設と2つのNASA施設の運営管理を担当。今回の契約にともない、本拠地であるバージニア州リンチバーグの従業員15名が直ちに作業を開始する。BWXT社のR.ジェベデン社長兼CEOも、「宇宙探査機用の原子炉や燃料を設計・開発・製造するなら当社が最も適任だ」とコメント。NTP事業の拡大が長期的に見込まれる宇宙市場で、同社が能力を発揮する良い機会になるとの認識を示した。

 総額1,880万ドルという今回の契約で、BWXT社は初期の概念設計やプロトタイプの燃料集合体および炉心を開発・製造する。NASAが最初の地上試験を行う際は、許認可手続と規制要件への取り組みで支援を行うほか、エンジンの試験プログラムも開発する予定。議会が充当する年間予算やNASAの実施オプションに基づき、2019年まで作業を継続することになっている。BWXT社のNTP原子炉は燃料に低濃縮ウランを使用しており、宇宙空間を航行する際は化学反応ベースの設計より数多くの利点がある。中でも最も重要なのは、推進システムが軽いため高い出力密度と効率性が期待できることで、これにより航行時間を短縮し、宇宙線による飛行士の被ばく線量を軽減することが可能になると説明している。