米サマー増設計画の事業者、州政府に対する計画放棄請願 取り下げ

2017年8月17日

 先月末に米サウスカロライナ(SC)州でV.C.サマー原子力発電所2、3号機増設計画を中止すると発表していたスキャナ社は8月15日、子会社のサウスカロライナ・エレクトリック&ガス(SCE&G)社がSC州公益事業委員会(PSC)に提出した同計画の放棄請願を、SCE&G社の意志により一時的に取り下げる方針であることを明らかにした。中止決定を公表した後の約2週間、同社幹部は州議会のリーダーを含む様々なステークホルダーと協議を実施。彼らが抱く懸念への対応として放棄計画の承認申請を一旦取り下げ、州政府関係者がこの件の審査を完了するまでの猶予期間を設けたいとしている。同計画にはSCE&G社が55%出資する一方、SC州営電力のサンティー・クーパー社が45%出資。SCE&G社の分析では、1基だけ完成させて発電量の不足分を天然ガスで補うオプションにも実行可能性はあったものの、全面中止を希望するサンティー社の決定を受け「(SCE&G社として)最も望まないオプション」を選択せざるを得なかった。現地の報道によると、SC州のH.マクマスター知事が労働者の雇用確保の観点から1基だけでも完成させるオプションを強力に支持しており、その復活策を模索中。国内の大手原子力発電事業者であるドミニオン社とデューク・エナジー社、およびジョージア州でA.W.ボーグル3、4号機増設計画を進めているサザン社に対し、同知事は増設計画におけるサンティー社の出資分、もしくはサンティー社そのものの購入を働きかけたと伝えられている。

 米国内で約30年ぶりの新設計画の1つであるサマー計画では、出力110万kWのウェスチングハウス(WH)社製AP1000を2基、2017年後半~2018年初頭の完成を目処に建設が進められていた。しかし、WH社が3月に倒産申請したのにともない、スキャナ社は2基とも完成させるか1基のみとする、あるいは2基とも断念する場合の工期とコストについて包括的な分析評価を実施した。現在の予測では2号機の完成は2022年12月、3号機は2024年3月にずれ込む見通しであるため、SCE&G社が両機の完成で負担する55%分の経費は99億ドルになると試算。東芝がWH社の親会社として支払う保証額を差し引いても88億ドルかかるのに対し、全面中止の場合に同社の負担分は49億ドルであり、東芝の親会社保証額や税控除を差し引くと正味22億ドルに留まる。このような試算結果に基づき、顧客その他のステークホルダーにとって最良の選択肢を選んだとしている。

 スキャナ社はまた、同社幹部のほかにシンクタンクのアナリストや証券会社、銀行、資産運用会社らを交えた電話会議を16日に開催しており、K.マーシュCEOは州議会の上下両院がサマー増設計画を審査する委員会を設置した事実に言及。中止決定によりSCE&G社とサンティー社の顧客が受ける影響や、規制上の監督手続について、州議会が審議する時間が必要になったとの背景事情を説明した。さらに、増設計画を再開させる可能性についても参加者から質問を受け、「意欲的なパートナー」が第一に必要になると回答。この件に関してはすでに州知事と協議したものの、増設計画の何パーセントを誰が所有すべきか、新たな協力協定を策定しなければならないとした。これまでWH社の主要受託業者として工事を行っていたフルアー社であれ、ほかの企業であれ、建設契約についての交渉も必要。WH社の技術を採用していることから、設計エンジニアリング面の支援を同社から受けられるようにサービス協定を再設定しなければならない。これらがすべて完了したとしても、改めてPSCの承認を得たり、プロジェクト・チームや建設チーム、現場監督チームを呼び戻す必要があるなど、非常に時間がかかる点を強調した。