米ニュースケール社、英国で10年以内のSMR建設に向けた行動計画

2017年9月7日

 米オレゴン州を本拠地とするニュースケール・パワー社は9月5日、独自開発中の小型モジュール炉(SMR)を2020年代にも英国の工場で商業生産し、発電電力を英国内に配電するという明確なビジョンを盛り込んだ意欲的な行動計画を公表した。この短期的な導入計画を通じて同社は、革新的SMR技術を利益の高い世界市場に送り出す輸出拠点として英国を生まれ変わらせることができると明言。数十億ポンド規模のSMR事業を英国内で起ち上げることにより、建設に必要な資機材の85%以上を英国企業に発注できるとしたほか、米国企業と英国産業界の素晴らしいパートナーシップにより、大西洋横断的な新技術の共同開発モデルが将来的にもたらされるとの認識を示した。ただし、目的達成のための時間は狭まってきており、このような導入計画による恩恵を100%実現するには、英国政府が即刻、決断しなければならないと強調している。

 米国においてもニュースケール社は、民間との費用折半でエンジニアリングと許認可取得および商業化を支援するという連邦政府プログラムの対象に選定され、今年1月には米国で初めて、SMRの設計認証(DC)審査を原子力規制委員会に申請した。また、6日付けの発表によると、米エネルギー省が国内の先進的原子力プロジェクト向けに設定した総額125億ドルの融資保証枠に、適用を申請している。政府の融資保証が得られれば、その他の政府支援策と共に、同社製SMRの初号機をアイダホ国立研究所内で建設する計画の一助となる見通し。この計画では、ユタ州公営共同電力事業体(UAMPS)が独自の「低炭素電力プロジェクト」の一環として同社製SMRを所有し、原子力発電事業者のエナジー・ノースウェスト社が米国初のSMRとして運転することになっている。

 ニュースケール社はすでに2015年10月、「世界のSMR市場は2035年までに4,000億ポンド(約56兆8,800億円)相当への成長が見込まれ、英国の原子力産業は早くからその中心的役割を担う」との独自見通しを公表。英国の原子力市場でSMRの事業チャンスを獲得し、低炭素な電力を提供していきたいとの意向を表明していた。今回の行動計画は、同社が過去数年間に英国企業と築いてきた堅固な協力関係を土台としたもので、すでに電子機器メーカーのウルトラ・エレクトロニクス社とは原子炉防護システム等の設計面で戦略的に協力しているほか、大型鋳鍛造品メーカーのシェフィールド・フォージマスターズ社とは、SMRの原子炉容器上蓋を共同で実証鍛造中。同社はまた、英国政府が低炭素経済に移行する方策として設置した「先進的原子力機器製造研究センター(NAMRC)」とも協力関係がある。

 従って、行動計画においては英国内でのSMR事業起ち上げに向け、国内企業と連携していく際のポイントを5つ明記した。すなわち、(1)「英国におけるエネルギー問題解決の1ソリューション」:経年化が進んだ石炭火力発電所と原子力発電所を低炭素電源でリプレースするため、英国では2020年代にもSMRが必要になる。また、将来的に電気自動車の需要増に対処するためにも必要。(2)「英国のリーダーシップと国際的な連携」:SMRは、英国が革新的原子力技術の開発・導入で世界的リーダーとなるためのチャンスであり、この米英連携によって先駆者としての強みを得ることができる。(3)「英国経済への貢献」:数十億ポンド規模のSMR事業によって、英国では経済成長や生産性、富の創出が強化される。民生用原子力部門の労働者65,000人に対しては、高給の雇用や知的財産権、輸出の機会がもたらされるだろう。(4)「短期的な事業機会の実現」:当社の成熟した設計と米国政府による支援、および関心を持つ顧客情報の活用を通じて、今後10年以内に英国内でSMRを導入することが可能。(5)「英国政府の支援による可能性」:長期的な政策支援や適切な市場条件、明確な規制審査プロセス、建設サイトの特定、といった政府の支援提供によって、英国はSMRで千載一遇のチャンスをつかむ事ができるだろう。